研究実績の概要 |
本研究の目的は、Citko(2011)が扱わなかった英語構文の分析を通して、対称的ラベル付けを裏付ける経験的基盤を補強し、同時に対称的ラベル付けの理論を精緻化し、Chomsky (2015)のラベル付け計算法に貢献をすることであった。 この目的を果たすうえで、筆者は、英語の疑似関係節が比較相関構文と「島」からの摘出に関して同じ振る舞いをすることに着目した。この類似性は、疑似関係節が比較相関構文と同じように、主節と関係節が構造的に並列して対称的にラベル付けされると考えることによって説明されると想定した。この研究成果は、「対称的ラベル付けによる擬似関係節構文の分析」(『学芸』(和歌山大学学芸学会)66巻 1- 8 , 2020年03月)として公表した。 最終年度(2020年度)は、対称的ラベル付けの考えが、英語の主語接触関係節にも拡張できるという想定のもとで研究を進めていた。しかし、研究は思うように進まず、方向を変えざるを得なくなった。筆者は、位相主要部の素性の一部が残留するという分離素性継承(Citko et al (2018))の考えを組み入れて、主語接触節構文の分析を行った。その成果を "Analysis of Subject Contact Relative Constructions Based on Split Feature Inheritance" としてまとめ、日本英語学会の機関紙English Linguistics に投稿し、38巻1号に掲載されることになった。
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