研究課題/領域番号 |
18K00652
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大野 英志 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (80299271)
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研究分担者 |
地村 彰之 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 名誉教授 (00131409)
中尾 佳行 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 名誉教授 (10136153)
佐藤 健一 滋賀大学, データサイエンス教育研究センター, 教授 (30284219)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非人称構文 / 『カンタベリー物語』 / 15世紀刊本 |
研究実績の概要 |
2021年度は、まず、これまで遅延していた『カンタベリー物語』15世紀刊本のテクスト入力作業を行った。入手した刊本資料そのものの印刷が不鮮明であった散文箇所を除く全ての箇所を入力(電子化)し、1行ずつ初期写本とのパラレルテクストを作成した。次に、調査対象とした非人称動詞17の内、比較的用例数の多いliken, listen(以上は好みを表す動詞)とouen, neden(以上は義務・必然性を表す動詞)の箇所をテクスト全体で確認(散文についても用例の箇所のみ確認した)し、そのうち義務・必然性を表す非人称動詞ouenについて、調査(初期写本と刊本との比較)結果を口頭発表し、その後論文として『英語英文學研究』第66巻に発表した。 期間全体を通しての研究成果として、調査した4動詞のうちlistenとouenについて2人称主語を取る場合に、非人称から人称への構文選択の変化が強く表れていることがわかり、言語の史的変化は一様ではないことがわかった。また、Fischer & van der Leek(1983年)の主張する、両用法と主語の意志 (volitionality) の強さとの関係性を踏まえると、上述の結果は、初期写本で同一動詞に見られた人称・非人称両用法の使い分け、換言すると発話者の聞き手に対する態度の濃淡が、15世紀刊本では読み取りづらくなっているということを示すのではないかと指摘した。ただ、1つの刊本においても用例によって人称用法への変更が行われない場合があり、さらにde Worde版は手本としたCaxton第2版よりも初期写本寄りの古風な表現を好む箇所があることもわかり、この点においても読み手を意識した刊本印刷に携わる人々の言語観が明らかになった。
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