研究課題/領域番号 |
18K00655
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
谷川 晋一 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (20585426)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ラベル付け理論 / agreement / 動詞句内主語構文 / 動詞句内主格構文 |
研究実績の概要 |
本研究では、Chomsky (2013, 2015) によって提唱されたラベル付け理論の中でも (i) agreementとは、どのように定義されるべきか、(ii) 長距離でのagreementは、維持されるべきか、をテーマとして設定している。ラベル付けには、agreementが必須であるとされているにも関わらず、この2点に関して深い議論がなされていないためである。また、従来の研究では盛んに議論がなされていた、英語の倒置構文や日本語の与格主語構文に関しても、ラベル付け理論におけるagreementの位置付けが不明瞭であるために、以前ほど着目されなくなったという実情もあるため、これらの構文の分析に焦点を当てることもテーマの一つである。
当該年度は、「主語位置での人称素性以外のagreement」という、本研究が英語の倒置構文を議論する上で避けられないテーマに関する研究発表及び論文の執筆を行ったが、研究発表の際の情報交換で、上記2点について、Miyagawa et al. (2018) が踏み込んだ議論を行っていることを掴んだ。この研究は、本研究と同様に、ラベル付け理論におけるagreementのあり方について、英語のThere構文等の観点から踏み込んだ研究である。よって、当該年度は、Miyagawa et al. (2018) 及びその関連研究を精査した上で、本研究と意見が一致する点及び異なる点についての整理を行った。Miyagawa et al. (2018) の主張を援用できる部分は援用しつつも、意見が異なる部分については然るべき差別化を行いながら、次年度以降に本研究テーマに関する研究発表や論文の執筆を行う準備期間とした。今後、この整理を基に、研究発表や論文の執筆を行うことで、ラベル付け理論との理論の整合性を見出し、生成文法理論の進展に寄与するとともに、動詞句内主語構文や動詞句内主格構文に再度、焦点を当てることで、統語論及び意味論研究一般における当該構文の扱いについても一つの示唆を与えられるはずである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究と同様のテーマに着目する研究があったことは、想定外だったが、結果的に、本研究を進める上では、有益だったと考える。特に、上述のMiyagawa et al. (2018) の代表者であるMITの宮川繁氏のような著名な研究者が同じ点に着目していることにより、前提的議論に費やすべき時間や紙面が少なくなった。前提的議論が研究発表や論文の対象にならなくなった点が当初の予定と異なるが、今後、研究を円滑に進める上では、むしろ、良い方向に働くと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上述のMiyagawa et al. (2018) の代表者であるMITの宮川繁氏が今年度、福岡を来訪される予定であるため、その際に、ラベル付け理論におけるagreementについて意見交換を行う予定である。可能であれば、宮川氏の他にもラベル付け理論に関する優れた研究を行っている研究者にお集まりいただき、研究会を行えればと考えている。 また、12月に行われる福岡言語学会において、本研究テーマに関わる発表を行うことになっている。ここでは、特に、英語の倒置構文、日本語の主格目的語構文を扱いながら、従来の枠組みで採用されていたProbe-GoalのC統御を基にした長距離のagreementがラベル付け理論においても必要とされることを論じる予定である。
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