研究課題/領域番号 |
18K00658
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
狩野 晃一 明治大学, 農学部, 専任講師 (90735648)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロバート・オヴ・グロスター / 年代記 / パラレル・テクスト / 写本 / 典拠研究 |
研究実績の概要 |
一世紀以上も前に校訂版が出されてからは、現在まで新たな版が出ていない『ロバート・オヴ・グロスターの年代記』の最新の知見を反映した版を得るためdiplomatic parallel text作成が現在進行中である。 そのために、まず、できる限り詳細な写本情報を記述し、来歴を明らかにするため、大英図書館およびオックスフォード大学ボドリアン図書館にて史料調査を行なった。その結果を「『ロバート・オヴ・グロスターの年代記』研究(1)」(明治大学教養論集 536: 79-94)としてまとめた。また、『年代記』の現存写本の画像収集を行い、大英図書館にて現物と照合した。今回は特に現在まで未刊行のテクストであるLondon, British Library, MS Additional 50848を集中的に点検し、diplomatic textを作成し、さらに写本情報に関する詳細な注を付した。その結果を「『ロバート・オヴ・グロスターの年代記』研究(2)」(明治大学教養論集 537: )として公表した。上記の2論文は明治大学機関リポジトリで公開されている。 パラレル・テクストの作成は、長短2種のテクストのうち長編版(約12,000行)の6写本を対象としており、少しずつではあるが進んでいる。 『年代記』の内容を、その原典拠(ジェフリー・オヴ・モンマス『ブリタニア列王史』、ヘンリー・オヴ・ハンティンドン『イギリス人の歴史』など)に照らして確認する作業も開始した。2019年度は原典の翻訳とその利用についての考察も組み入れて研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで『年代記』の長編版6種の写本のうち、5写本につきデジタル画像を入手し、テクスト転写を進めている。転写の過程で出てきた判読困難な箇所については大英図書館等で原本で確認する作業を行なった。各写本の来歴についての調査論文と、London, British Library, MS Additional 50848写本の転写テクストおよび注を紀要に掲載したほか、パラレル・テクスト作成も進んでいる。 本文比較のため、典拠利用に関する研究も始めた。言語的観点から典拠利用を論じることで『年代記』の作者の詩作方法を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
現存写本のテクスト転写を引き続き行い、パラレル・テクスト作成を進める。同時に典拠がいかに使用されたかについて、ジェフリー・オヴ・モンマス『ブリタニア列王史』、ヘンリー・オヴ・ハンティンドン『イギリス人の歴史』などの原文と韻文年代記の本文との比較調査を行い、その典拠利用、詩作方法を解明する。 上記調査の結果を学会、論文で発表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は研究を開始した年であり、資料収集を主に遂行し、現在まで必要な大部分の基礎資料が集まったが、まだ数点の必要資料の購入が済んでいないため残額が生じている。 また資料収集と資料の整理のために多くの時間を費やしたので、研究発表にまで至らず、その出費がなかったことも残額がでた理由である。 次年度は資料収集を進めるとともに、研究発表を国内外で積極的に行う予定である。
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