研究実績の概要 |
2020年度の当初の目標は写本画像からのテクストの転写および、それを元にした海外図書館あるいは資料館における写本原本との照合作業を行う予定であった。前年度までに撮り溜めた写本画像からのテクスト転写については、着実に進展しているが、しかしながら、COVID-19の影響により移動を伴う研究出張ができなかったため、後者の現地におけるテクストの照合作業ができない状態が続いた(本報告書を書いている2021年5月現在もまだこの状況が続いている)。 テクスト転写について、具体的には、The Chronicle of Robert of Gloucesterの長編版写本の一つであるLondon, British Library, MS Additional 18631の転写を進めた。これはところどころ欠損(あるいは意図的な編集)があるが、『年代記』のはじめの記述から始まり、他の写本との比較研究に資する写本である。このテクスト転写作業は現在終了している。同時に現在まで転写を完了している他のテクストとのパラレル・テクストの構築に向けて準備を進めているところである。 さらに、残りの長編版写本についても転写作業を進めている。London, British Library, MS Additional 19677の転写は折り返し地点に差し掛かっている。 昨年度は現地調査ができなかったため、スコットランド、グラズゴー大学図書館所蔵の写本画像が取得できていない。COVID-19の状況が改善次第、現地調査を行って画像の収集に当たる予定としている。 また、本研究計画当初は長編版のみを対象とするとしたが、研究の進展に伴い、短編版の一部も範囲に含んだ方が良いのではないかとの見方も生じてきた。
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