研究課題/領域番号 |
18K00660
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
木村 博子 千葉工業大学, 工学部, 助教 (40637633)
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研究分担者 |
森田 千草 戸板女子短期大学, その他部局等, 講師(移行) (20736079)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 統語論 / 省略 / 格 / 前置詞 / 後置詞 / 方言 |
研究実績の概要 |
本研究は、省略と方言という2つの視点から、諸言語における格助詞・前置詞・後置詞の特性の解明を目指してきた。 省略の視点からの研究においては、省略の有無が格助詞・前置詞・後置詞の具現(発音されるか否かや前置詞/後置詞とその目的語の語順)に影響を及ぼすのかを明らかにすることを主たる解明事項としてきた。今年度は、英語のWhy-Strippingと呼ばれる省略構文を扱い、「前置詞が省略構文の残余句の一部として発音されるか否かは移動の際の前置詞残留が可能か否かに連動する」というYoshida, Nakao and Ortega-Santos (2015)の主張を検証した。当該の研究成果は、English Linguistics(日本英語学会誌)に掲載されることが決まった。また、前置詞とその目的語の語順についての研究成果の一部を、『今さら聞けない英語学・英語教育学・英米文学』(日本英語英文学会30周年記念誌)において公表した。 方言の視点からの研究については、格助詞・後置詞・前置詞が担う意味役割の解明を主たる解明事項としてきた。当初の研究計画では、東京方言における「二」格が「サ」として具現化されることがある東北方言における「二」と「サ」の使い分けの聞き取り調査を行い、「二」格要素の意味役割の解明を目指してきた。しかし、コロナ感染症の影響で、母語話者への聞き取り調査の実施が難しい状況のため、計画を変更して、文献データに基づき研究を進めることにした。今年度は、研究分担者の森田千草先生と、日本語の二重目的語構文における「二」格の担う意味役割を調査した。特に、二重目的語をとる動詞を、「二」格が①所有者(possessor)解釈を受ける動詞②場所(location)解釈を受ける動詞③所有者と場所解釈の両方を受ける動詞の3種類に分類するKishimoto(2000)の提案の妥当性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
省略の視点からの格助詞・後置詞・前置詞の具現形についての研究は、計画通りに進み、研究成果を複数の雑誌において公表できた。 一方で、方言の視点からの格助詞・後置詞・前置詞が担う意味役割の解明を目指す研究は、研究期間の初年度に研究代表者の出産・育児休暇があったことに加え、2年目以降はコロナ感染症の影響があり、方言母語話者への聞き取り調査が計画通りに進められなかった。そのため、方言の視点からの格助詞・後置詞・前置詞の研究は、当初の計画よりは少々遅れているが、次年度には研究成果を公表できる段階までは進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
省略の視点からの研究については、計画していた内容をほぼ終えることができた。研究成果の一部をまとめた論文がEnglish Linguisticsに掲載されることが決定しており、次年度は、当該論文の校正作業に励む。 方言の視点からの研究については、コロナ感染症の影響が続く中、方言の母語話者への聞き取りが難しい状況にある。そこで、当初の計画を変更し、母語話者への聞き取りではなく、文献データに基づく研究に変更する。東京方言の「二」格に当たる要素が「二」以外の複数の形態で具現化される方言に焦点を当て、「二」格の担う意味役割の解明に努める。特に、二重目的語構文における「二」格の意味役割についての研究を進め、研究成果を学会で発表するとともに、論文としての出版することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の初年度は、出産・育児休暇のため、予定していた方言の母語話者への聞き取り調査が実施できなかった。その後も、コロナ感染症の影響で、聞き取り調査や研究発表を行うことができず、旅費を中心とする研究費を計画通りに使用することができなかった。 コロナ感染症が終息する見込みがないため、研究計画を変更し、母語話者からの聞き取りデータを中心とする研究から、方言の文献にあるデータを使用する研究に変更する。この変更に伴い、旅費や人件費として計上していた予算を、方言を含む言語学に関する図書の購入費用に充てる。
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