動詞の名詞化は形態論と統語論とのインターフェイスを探求する上で極めて重要な現象である。名詞句(例:driver of a truck)に比べ、動詞由来複合語(例:truck driver)は派生名詞及びその項をコンパクトに凝縮したものと言えるが、形態論の独立性について検証する際の格好の対象でもあると言える。本研究は英語の動詞由来複合語における、項構造に基づく意味解釈について、特に接尾辞の種類・役割に着目し、形態・統語のインターフェイスの観点から、理論・実証の両面において多角的に解明した。 具体的には以下を明らかにした: ①動詞由来複合語内の意味解釈のメカニズムを明らかにした。②上の意味解釈に課される様々な制約の根本にある性質を突き止めた。 ③動詞由来複合語の派生及びその内部における意味解釈が統語部門・形態部門のどちらで行われるかを解明した。④名詞句と比較した場合の動詞由来複合語の持つ特徴及び形態論上の位置づけを示した。⑤先行研究における動詞由来複合語の文法性の判断について、インターネット及びコーパスから得られたデータと比較し、理論言語学における言語事実の観察において、話者の直感による判断及びコーパスの研究手段としての効果及び妥当性を明らかにした。 本研究はこれまで蓄積されてきた研究成果を生かしつつ、動詞由来複合語の性質を検証すると共に、形態・統語のインターフェイスを解明し、分析の基礎となるデータの質及び信憑性を高めることを目指す、理論的・実証的研究である。
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