研究課題/領域番号 |
18K00663
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
牧野 武彦 中央大学, 経済学部, 教授 (00269482)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 英語発音 / 日本語話者 / リズム拍 / 音節 / ピッチ変動幅 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトで新たに使用する音声データの収録とラベリングが遅れているため、当面できることとして、前回の科研費プロジェクトで使用していた単音ラベリングデータ(ERJ Phonetic Corpus)を用いて研究を進めた。 研究成果としては、このデータの一部にプロソディー表記を加えたものを用いてプロソディーの特徴を調べた "Prosodic patterns in English Read by Japanese Phonetic Corpus: An interim report" を、アメリカで行われた第10回第二言語発音学習教育会議で口頭発表した。ここで暫定的に明らかになったこととしては、日本語話者による英語発音において、音節数とリズム拍数の比率が、全般的に評価された各話者の英語発音スコア(元のERJ speech databaseにおいて収集)と逆比例の関係にあり、発音がうまいと評価されている話者の方がリズム拍数が少ない(=いわゆる強勢拍リズムを持つ)傾向にあることが分かった。これは理論的予測と一致する。他方、日本語話者の方が狭くなることが理論的に予測されるピッチ変動の幅については、今回のデータの範囲では違いが見いだされなかった。 この ERJ Phonetic Corpus のプロソディーのラベリングについては、当初計画では、新規に収集するデータで完全版を作るために棚上げする予定であったが、その方針を変更して全体のラベリングを進めることとした。それを用いてプロソディーと分節音の音韻過程の関係を分析する研究発表の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の研究計画においては、今年度は、①日本語と英語の中間言語的プロソディーの表記法の精緻化②予備的に収集した英語音声へのラベリング付加(但しプロソディーを優先)③前項で作成したラベリングデータによる、話者の日本語発音と英語発音の関係の調査研究④収録のための文セットの作成と改良、を行うこととなっていた。 このうち②については、筆者が参加している別プロジェクトで収集している音声データを使用する予定であったが、そこでの収録が遅れており、必然的にラベリングも遅れている。このため③には着手できていない。④についても進行中であるが、②を睨みながら様子を見ていたため、完成には至っていない。①はほとんど完成しているが、研究成果の発表には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
別プロジェクトにおける音声データの収録がスピードアップするかどうかは不透明であるため、これを待つことなく、本プロジェクト独自の音声収集を進めることにしたい。そのためには、収録用の文セットを夏~初秋までに完成させ、秋~翌春にかけて収録できるように準備する。すなわち、本プロジェクト1年目の計画を棚上げしたまま2年目の計画を進めることとする。本来の計画に比べると、プロソディーの表記体系および日本語と英語の音声の関係の記述についての研究の予備的段階を省略することになるが、表記体系に関しては、本格データのラベリング中にもフィードバックは可能であるため、進行に時間が多少余計にかかることになる程度で大きな問題はない。日本語の発音と英語の発音との関係についても、予備的段階を省略することで問題は生じないと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも研究成果の発表回数が少なくなったために、予定よりも支出が少なくなった。これは翌年度の研究成果発表の回数を1回増やすことに使用する予定である。
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