研究課題/領域番号 |
18K00664
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
田頭 未希 東海大学, 国際教育センター, 准教授 (50408019)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 手話言語 / ASL / 韻律と意味用法 / 目と眉の動き / JSL |
研究実績の概要 |
本研究は、アメリカ手話の談話に見られる言語現象を、韻律的情報および談話構造情報の両方の側面から分析することにより、アメリカ手話に表出する韻律的情報とその意味用法の対応関係の実態を解明することが主たる目的である。 2020年度は当初の研究最終年度であったため、国際学会や国際ワークショップでの研究発表や参加を予定していた。しかし、世界的なコロナ禍となり、参加を予定していた全ての学会、ワークショップがキャンセルや延期となった。そのため、国内でデータ分析を引き続き行い、次年度以降の発表、論文の準備に切り替えることとした。さらに、2020年度は、データ分析を終えた上で、アメリカで直接、ネイティブサイナーの方から内省を聞くことも予定していたが、渡米できなくなっため、急遽、比較のための日本手話データを国内で新たに収集することとし、年度後半に日本手話データを収録した。年度前半は、主にアメリカ手話のTweetyデータの追加アノテーションと分析、年度後半は日本手話のTweetyデータと曖昧文のアノテーションと分析を行った。アルバイトの雇用が中断したため、アノテーション作業に時間を要した。アメリカ手話は目の動き(主に瞬き)と眉の動きが韻律境界のマーカーとして重要な働きをしているのに対して、日本手話では、韻律境界と考えられる位置で、瞬きよりも頷きや頭・上半身の傾斜が伴う動きが複数観察された。 アメリカ手話のデータは新しい収録が行えず、手持ちのデータで考察を余儀なくされた一方で、新たに日本手話との比較データが得られたことは、研究全体として大きなメリットであったと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は世界的にコロナ禍に晒され、国際学会やワークショップがキャンセルとなり、当初、発表、参加を予定していたがそれが叶わなかった。また、研究最終年度に渡米し、分析データをもとにアメリカ手話のネイティブサイナーに内省を聞き、データの解釈の確認をしたいと考えていたが、そちらも延期となってしまい、計画していたことの大幅な変更を余儀なくされた。しかしながら、データに追加のアノテーションを行ったり、日本手話との比較を考え、国内で、日本手話のネイティブサイナーの協力を得、新たなデータを収録することができ、研究全体としては幅を広げることができたと考える。また、日本手話ネイティブサイナーの内省を聞くこともできたため、対照研究的な視点を加えることが叶となった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナが終息に向かい、2021年度内に渡米が可能となれば、アメリカ手話のネイティブサイナーの内省調査を現地で行いたいと考えている。しかし、渡米が叶わなかった場合は、アンケートなど紙面での代替措置を講じることを考えている。また、2021年度が研究の最終年度となるため、国際学会だけにとらわれず、国内での発表に切り替え、投稿中も含め、投稿論文に十分な時間を裂く予定である。2018年度のサバティカルや2020年度のコロナ禍の副産物として、対照研究としての視点も含め、研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度、世界的にコロナ禍となったことで、主に下記の点から、交通費、人件費・謝礼の予定使用額に変更が生じた。(1)参加を予定していた国際学会やワークショップがキャンセルや延期になり交通費を使用しなかったこと、(2)アノテーション作業のために雇用していたアルバイトの雇用自体が中断したこと、(3)新しい手話言語データの収録ができず、謝礼や手話通訳士への支払いがなかったこと、などがあげられる。
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