本研究は、手話言語の韻律的情報と談話構造情報の両側面から分析を行い、アメリカ手話において両者の対応関係を明らかにすることを目的としている。特にアメリカ手話において重要なプロソディックマーカーである目とそれに伴う眉の動きに注目している。研究期間全体を通してみると、2019年からの世界的コロナ禍により、国外でのデータ収集をはじめ、国外のワークショップ、学会への参加や研究発表の予定を変更せざるおえなくなり、2年目以降は計画通りに研究を進めることが難しくなった点は否めない。 しかしながら、本研究初年度に、国外で研究する機会が得られ、そこでアメリカ手話だけでなく台湾手話、イタリア手話など複数の手話言語に触れられたことで、対照言語学的視点が検討できた点は大きかったと言える。アメリカ手話の現象を日本手話と対照しつつ、収録済みであったデータを再分析し、眉と目だけでなく、他の非手指要素との動作のオーバーラップについても検討を行うことができた。アメリカ手話でも日本手話でも、複数の非手指要素が同時に入れ替わる事象がある点を明らかにし、韻律構造上の境界と文脈(意味)との関連性を示唆した。最終年度も日本ではコロナ禍の終息が見えず、アメリカ手話の追加データの収録は行えなかったため、これまでのデータを見直し、目(まばたき)の動きについての分析を、他の非手指要素との関連性の観点から追加検討を行った。さらに、アメリカ手話のデータと同様のマテリアルと手法で得た日本手話との対照研究的視点から分析を行い、成果物として東海大学大学院日本語教育学論集に投稿した。 研究期間における研究成果としては、人工知能学会言語・音声理解と対話処理研究会(2019年、2020年)や日本手話学会(2021年)での研究発表、東海大学大学院日本語教育学論集へ投稿した論文(2022年、2023年)があげられる。
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