研究実績の概要 |
今年度は最終段階として、英米児童文学の文体について包括的な成果をまとめ、英語教育への応用に注力した。英米児童文学コーパスをWmatrixで分析し、BNCのSampler Written Imaginativeと比較対照する中で、品詞や意味タグのKeyness analysisをまず行った。特徴的な品詞分析から、think, say, see, wish等の思考動詞, faceやheadなどの身体部所の名詞、small. old, new, strange, beautifulなどの新旧、美醜に関連する形容詞、very, again, so, then等の程度、時間継起に関わる副詞、and, but等の等位接続詞が特徴的な語彙として指摘できた。 意味タグの特徴では、Degree:Booster, Size:small, Time:old, grown-up, Light等から児童文学の世界観の表出が指摘できた。19世紀以降の児童文学のコーパスを自ら構築したものに、The CLiC Projectの児童文学コーパスを加え、約20万語のコーパスに基づいて英米児童文学の俯瞰的な特徴を指摘できたと思われる。 英語教育におけるコーパス文体論の応用として、コーパスデータ駆動型言語学習(DDL)の問題点を明らかにした。授業準備の手間、作業効率の悪さ、分析の解釈の難しさを指摘し、教師の役割として文体分析がDDLの課題設定につながることを概述した。教室で学生と文体分析を協働することによって児童文学のテーマと解釈を議論し、言葉への気づきを促すと考えられる。 実績としては海外での学会で成果を発表したかったが、コロナ禍による学会開催の延期から国内の国際教養学会(JAILA)の全国大会(オンライン開催)における口頭発表1本と日本英文学会関東支部の支部統合号に招待論文として研究成果を1本を発表した。
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