研究課題/領域番号 |
18K00669
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研究機関 | 岡崎女子短期大学 |
研究代表者 |
小宮 富子 岡崎女子短期大学, 現代ビジネス学科, 教授 (40205513)
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研究分担者 |
石川 有香 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40341226)
吉川 寛 中京大学, 公私立大学の部局等, 特任研究員 (90301639)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | モダリティ表現 / 日本人英語 / proficiency / multilingual resources |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1)日本人英語における「主観性=モダリティ」の表れ方に焦点を当て、学習段階と習熟段階における、日本人英語の文法・語用論的特徴を比較し、「中間言語段階以降も日本人英語に持続的に見られる日本的モダリティ表現」を抽出すること、また2)国際英語論の観点からEC圏に属するアジア諸英語との比較を通して、日本人英語の文法や語用論における独自特徴を同定することである。 令和2年度はコロナの影響を考慮し、対人的な調査よりも文書資料の分析を中心とする研究方法を用いることとし、日本人英語の特徴と思われるIthink表現の多用が生じている理由に関する仮説を立て、①英語文献②日本語訳書③日本語訳文の英訳文、という3種類の資料を比較分析することにより、日本語のモダリティ表現「と思う」の「発話態度モダリティ」用法を表現する意図が、英語の思考表現 ' Ithink'の多用に影響を与えている可能性を明示することができた。また、I think表現では「発話態度モダリティ」を示すことができず、「概念的意味」の表現に一元化されてしまうことが日本人英語の一種の冗長性を生んでいる原因となっている可能性を確認することができた。アジアの英語と日本人英語との違いをコーパス分析を通して抽出し、認知言語学的分析を通して、日本語「と思う」のもつ発話モダリティ用法が、英語thinkの概念的意味用法に転用されることにより、日本語独特のI thinkの多用現象が生じている可能性を抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、「日本語と英語は『主観性=モダリティ』の現れ方に根本的な相違がある」という認識を前提に、「学習段階および習熟段階の日本人英語に見られ る日本的な主観性の表れ」事例の分析が必要であると考えており、日本人英語におけるモダリティの諸相の分析を行ってきた。令和2年度は英語と日本語の資料分析を通して「と思う」表現と' I think'表現の関係を詳細に記述分析することができた。 また、研究成果についてもオンラインでの研究発表や学会紀要への投稿などをとおして発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、これまでの研究を総括し、理論研究・実践研究の両面で日本人英語の特徴と英語学習の関係、国際英語論にとっての本研究の意義、英語教育への示唆などの視点から、総合的な研究成果の発表を行う。 日本人英語に影響を与えている日本語モダリティの事例対象をより拡大して分析し、日本語モダリティが日本人英語に影響を与える際の「型」といえるものの抽出を試みたい。また、それが日本人英語のあり方にもつ意味について国際英語論の視点からまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は海外での学会発表(AILA2020)に採択され、旅費申請を行ったが国際学会が延期となったため、旅費の未使用が生じた。2021年度は国際学会への参加を引き続き計画するとともに、統計ソフト(SPSS)の購入も必要となっており2021年度予算の負担が増加した。また、研究総括に向けて、英語文献のまとまった購入を予定している。
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