研究実績の概要 |
must, have to, had better, should, need toが使用される環境・場面・状況の詳細を考察した。must, should, had betterに関する論考では、「束縛的モダリティ」(=「義務」や「必要性」などに関する心的態度)においては、原則として「動機づけ」(=話し手が心的態度を表す際の「理由」、「目的」、「条件」など)が存在することを実証し、各表現に関与する、力の強さや種類、動機づけのタイプ、言語行為、「メンタル・スペース」(=認知領域)構築を明らかにすることにより、意味論的・語用論的に各表現の特徴を比較した。mustとhad betterは、強い力を表す表現、shouldは弱い力を表す表現と特徴づけることができる。さらに、had betterは「脅迫」、shouldは「助言」の力と関連がある。力の特徴の違いにより、各表現と動機づけとの呼応関係が異なる。mustは、好ましい動機づけと好ましくない動機づけの双方と共起し、had betterは、好ましくない動機づけとのみ共起する傾向にあり、shouldは好ましい動機づけと共起する傾向にある。また、これらの特徴の違いはメンタル・スペース構築にも反映される。 need toとhave toに関する研究では、義務・必要性がいつ存在しているのか、そして、義務内容は発話時に実現しているのか、といった観点から、両者の特徴を明らかにした。また、(i)need toとhave toにも束縛的モダリティには原則として動機づけの関与があるという原則が当てはまること、(ii)両表現は、義務の強さ、種類、特定性、関連する言語行為の面で類似した特徴を有すること、(iii)一人称単数主語が用いられ、動機づけが内在化されるケースにおいてneed toとhave toは振る舞いを異にすること、(iv)動機づけが内在化される際、前提が「現実スペース」(=話し手の現実)に受け継がれることも論じた。さらには、高校生用検定済教科書等での記述内容を検証し、教育への応用についても考察を加えた。
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