研究実績の概要 |
まず、学習指導要領での到達目標や法助動詞の扱われ方を検証した。次に、法助動詞が多義的であるという意味論的・語用論的見解をまとめ、多義性の概念が、高校生用の教科書に十分に反映されていないケースが見られることを指摘した。mustやmayの(「義務」や「許可」といった)束縛的な意味は挙げられているが、(「推量」や「判断」といった)認識的な意味は紹介されていないものや、willの認識的意味は挙げられている一方で、(「意志」や「能力」といった)力動的意味は挙げられていないものが観察された。この現状が到達目標の達成を妨げている要因となっている可能性に言及し、どのような法助動詞の意味論的・語用論的特徴を学習者に提示すれば、到達目標の達成に近づくのかを議論した。また、義務的な意味を表すmust, have to, had btterに関しても同様プロセスで考察した。 一人称主語と共起するneed toの意味論的・語用論的特徴も考察した。まず、義務づけの「動機づけ」の概念を概説し、動機づけは明示的に言語化されることもあれば、特定の条件を満たせば潜在的に含意されることもあることを述べた。次に、束縛的なneed toが用いられる場合、主語の内的な義務の関与があることを、先行研究から明らかにした。そしてその特徴が、一人称主語と共起するneed toの動機づけの潜在化を可能にすることを主張した。この分析をもとに、メンタル・スペース理論の枠組みで、I need toには、前提の浮遊の関与があることを指摘した。
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