本研究課題の目的は、所格交替(locative alternation)に含まれる動詞および構文の、特に後期近代英語期(1700-1900年頃の英語、以下、LModE)以降における使用と変化の実態を明らかにすること、および、その通時的変化を、通時的構文文法という理論に基づいて説明することである。 本研究は、所格交替に関わる2つの構文、具体的には場所目的語構文(例:load the truck with hay)と物材目的語構文(例:load hay onto the truck)のLModEから現代英語に至るまでの使用状況に関する実証研究と、通時的構文文法理論に基づく分析、に大別される。コロナ禍による特例措置として1年間の延長をお認めいただき、採択最終年度となる今年度は、実証研究の継続と理論的な考察を行った。 所格交替に関する先行研究では、関係する動詞にはいくつかのグループがあることが指摘されている。今年度にかかわる研究として、「詰め込み」を意味するcramクラスの動詞と「放出」を意味するsprayクラスの動詞について調査を行い、同じグループに属する動詞であってもその発達過程は個々の動詞で異なることがあることを実証した。その内容は、論文としては『コーパスからわかる言語変化・変異と言語理論3』(開拓社)の中で「後期近代英語期におけるcramとpackを含む構文の所格交替について」という題目で公表し、口頭発表では「英語におけるsprayクラス所格交替動詞の歴史的発達について」という題目で、言語変異・変化研究ユニット第10回ワークショップにて公表した。
|