研究課題/領域番号 |
18K00681
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
森山 新 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (10343170)
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研究分担者 |
山本 冴里 山口大学, 国際総合科学部, 准教授 (00634750)
李 暁燕 九州大学, 共創学部, 准教授 (70726322)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 複言語主義 / 複文化主義 / 接触仮説 / 間文化的シティズンシップ教育 / コスモポリタン・シティズンシップ / 遠隔教育 |
研究実績の概要 |
当初計画の最終年度にあたる2020年度はコロナ禍故に研究の進捗に様々な支障が生じることとなった。 理論面では、東アジアのシティズンシップ教育としての第二言語教育への応用を念頭に、昨年度は主にシティズンシップ教育の歴史や理論、現状を明らかにしたが、2020年度は集団間の対立や葛藤の原因とその克服を扱った諸理論、具体的にはAllportの接触仮説に始まり、脱カテゴリ化、再カテゴリ化、相互差異化などの重要性を述べるモデルにあたり、東アジアにおける対立克服への応用可能性について考察した。 具体的成果としてはいくつかの論文を発表した。第一に、2018年度に韓国の大学との間で実施した国際遠隔合同授業、世界7か国合同で実施した第8回国際学生フォーラムのデータを用い、東アジアが共に生きるための間文化的シティズンシップ教育としての成果を考察した。第二に、2019年度には米国の大学と環境問題をテーマに第9回国際学生フォーラムを実施したが、そこではOsler & Staerkeyのコスモポリタン・シティズンシップの枠組みを新たに採用、教育実践を行った。その結果を分析し、8月に口頭発表を行い、近々ジャーナルに投稿予定である。第三に、2020年度第10回国際学生フォーラムをオンラインで実施した。第四に、釜山外国語大学校との間で、今年度も国際合同遠隔授業を実施し、新たにデータを収集しており、これらは将来的に何らかの形で発表予定である。第五に、価値として、能力としての複言語主義を伸長するための実践について、研究発表(招待)と論文発表を行った。論文は、複言語教育の中心地であるヨーロッパの言語教育政策誌に掲載された。第六に、日本人学生と留学生の協働学習クラスにおける教育実践を分析し、言語教育を超えて、シティズンシップ教育を有効に実践できる可能性を明らかにした。論文は、大学学術誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述したように、当初計画の最終年度にあたる2020年度であったが、コロナ禍の影響で本来予定していた一つの教育プログラムが中止に追い込まれ、一つはオンライン化されたことがやや遅れたことの第一の原因である。 第二の原因として、そのような事情により、他の研究・教育プログラムが優先され、本科研プロジェクトは思うように進めることができなかった。 第三に、第8回国際学生フォーラムの成果を発表するはずの国際学会(2020年8月に予定されていた日本語教育国際シンポジウム)が延期し、教育実践の成果発表を予定通り実施することができなかった。なお、この学会は2021年度にオンラインで実施されることになり、科研代表者・分担者3人で発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年延長することが認められたため、最終年度に実施予定でありながらできなかった教育実践や学会発表、論文投稿を、コロナ禍の中で実施できる範囲内で2021年度の1年間に最大限実施していく予定である。 また、これまで先行研究にあたり考察してきた、シティズンシップや葛藤や偏見軽減のための理論を参考に、東アジアがともに生きるための第二言語教育とはいかにあるべきかを考察し、それを実際に複言語・複文化教育プログラム、国際遠隔合同授業、国際学生フォーラムなどの教育実践に生かし、検証作業を進めていく予定である。 なお、これらの科研の成果は、1冊の本として出版予定(共著)であり、現在執筆がすすめられている。今年度中に原稿を執筆、来年度ごろには出版の運びとなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来最終年度であった2020年度が、コロナ禍の影響で、教育実践(複言語・複文化教育プログラムなど)や国内外の学会での研究成果の発表(ヨーロッパ教師会等主催の第24階ヨーロッパ日本語教育シンポジウムなど)などができなかった。 次年度には2020年度にできなかった、期間中の研究成果の論文化、及び上記海外国際学会等での成果発表、報告書の作成などを行う予定である。
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