研究課題/領域番号 |
18K00690
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研究機関 | 国際教養大学 |
研究代表者 |
堀内 仁 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (40566634)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 統語的複雑さ / 書き言葉 / 第二言語発達 / プロフィシェンシー / 名詞修飾構造 |
研究実績の概要 |
2021年度は、本科研プロジェクトのために初年度に収集した国際教養大学の日本語学習者エッセイデータに国立国語研究所の統語・意味アノテーションコーパス(NPCMJ)と同様の方式でタグ付け作業を行い、ツリーバンク「Suginoki」(https://jltrees.github.io/)を完成することができた。 このデータは2018年度に国際教養大学の短期交換留学生26名がそれぞれ書いた2つの意見文(「ファーストフードと家庭料理の比較(600字)」、「インターネットと新聞・雑誌の比較(800字)」)及び3つの短作文(「友達」「楽しい授業」「幸せの条件」)を含み、19,395語、1,245樹形図から成る。同データは、国際教養大学の日本語プログラムの中級から上級にいたる5レベルのクラスからそれぞれ5名分(中上級1クラスのみ6名分)を集めたもので、習熟度レベル別の調査が可能になっている。2つの意見文はそれぞれ「多言語母語の日本語学習者横断コーパス(I-JAS)」のエッセイ及び「日本・韓国・台湾の大学生による日本語意見文データベース」のエッセイのトピックを採用し、他の学習者データとの比較も可能にしている。更に、誤用にもタグ付け(NA)がしてあり、誤用と修正した正用文の統語構造が比較可能になっている。また、Suginokiは英語のPenn Treebankと同様に句構造・樹形図に基づく統語分析が与えられており、本科研プロジェクトの研究課題である統語的複雑さを理論言語学的観点から分析できるようになっている。 Suginoki開発とそれに関する報告以外に、2021年度は日本語学習者の話し言葉と書き言葉の統語的複雑さの比較に関する研究、台湾・元智大学の学生の作文に見られる名詞修飾表現の複雑さに関する研究、名大会話コーパスにおける話題と統語的複雑さの関係に関する研究の成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度はコロナ禍の影響で日本語学習者ツリーバンクSuginokiの開発のために行うタグ付け作業を全て一人で行わなければならず、多くの時間とエネルギーを注いでしまった。2021年度は同ツリーバンクを完成したり、いくつかの研究成果の発表をすることにより、ある程度の成果を上げることはできたが、当初予定していた研究成果の論文化に十分な時間とエネルギーを注ぐことが出来なかった。特に、I-JASのストーリーテリング・ストーリーライティングのデータに基づいて行った話し言葉と書き言葉の統語的複雑さの比較に関する研究は、日本語教育のみならず第二言語習得研究や学習者コーパス研究にも寄与すると考え、分析を進めていた。統計分析では一定の結果が出せたが、その結果を説明する要因が特定できておらず、論文は未だ完成していない。その意味でやや遅れ気味と言える。
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今後の研究の推進方策 |
本科研は本来2020年度が最終年度であったが、研究計画の変更に応じて一年の延長が認められ、更にコロナ禍の影響でもう一年の延長が可能になった。2022年度は、2021年度に完成したツリーバンクを用いて日本語学習者言語の統語的複雑さを統語構造の観点から分析し、その成果を発表したい。また、2021年度には実現できなかったが、本科研の目標である日本語学習到達指標を提案しながら、研究成果をまとめて学術的な価値のある研究論文を出版したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で出張旅費や謝金など使用の機会がなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は研究成果発表のための旅費あるいはデータ処理のための謝金やツールの購入などに使用する予定である。
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