研究課題/領域番号 |
18K00690
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研究機関 | 国際教養大学 |
研究代表者 |
堀内 仁 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (40566634)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 統語的複雑さ / 書き言葉 / 第二言語発達 / プロフィシェンシー / 名詞修飾構造 |
研究実績の概要 |
2022年度は、前年度に完成したツリーバンクSUGINOKIを用いて、L2日本語の統語的複雑さに関する小規模な調査を行った。従来、統語的複雑さの研究は文(T単位)の長さや従属節の埋め込みの多さなどの定量的調査に基づくものが主流を占めており、文(T単位)が長ければ長いほど、また、文(T単位)中の従属節の埋め込みが多ければ多いほど、その文は複雑であると考えられてきた(仮説1)。一方、こうした文の複雑さは話し言葉に見られる特徴であり、書き言葉においては(名詞)句の複雑さがその特徴となっており、書き言葉における後者の測定の重要性が主張されてきた(仮説2)。SUGINOKIを用いて行った本調査では、仮説2の妥当性が検証された。ツリーバンクならではの構造分析に基づいて、文長や従属節の埋め込みを定量的に測定したが、習熟度レベルの高さとの間に十分な対応関係は見られず、連体修飾節を含む複雑名詞句に基づく測定では習熟度レベルの高さとの対応関係を示した。また、樹形図で統語構造を可視化できる利点を生かし、数量の増加だけではなく、それぞれの習熟度レベルで学習者がどのようなタイプの埋め込み構造を発達させていったか、質的な分析が可能となり、各レベルでの特徴的な構造的複雑さを示すこともできた。従来のSLA研究の枠組みで行われてきた定量的な統語的複雑さの測定方法に加えて、樹形図によって可視化される構成素構造の複雑さを指標とする新たな測定方法の提案が出来れば、本研究の理論的意義も高まるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度は、コロナ禍からポストコロナ期への過渡期であり、また、個人的にも主に母の介護といった家庭の事情などもあり、概要で示したような小規模な研究の成果を小さな研究発表の場で発表するにとどまり、大きな学会での発表や学術誌への投稿など、当初予定していた計画が実行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本科研は本来2020年度が最終年度であったが、研究計画の変更に応じて延長が認められ、更にコロナ禍の影響で更なる延長が可能になった。2023年度は、2021年度に完成したツリーバンクを用いて行った2022年度の小規模な研究を更に発展させ、L2日本語の(名詞)句の複雑さに関する包括的な研究を行い、その成果を学会での研究発表や学術誌への論文投稿という形でまとめていきたい。また、SUGINOKIとは別に行ってきたI-JASを用いた研究の成果も論文化することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
家庭の事情により、学会出張などが出来なかったため。次年度は海外での研究発表等の成果発表の機会に使用する予定である。
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