研究課題/領域番号 |
18K00692
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
内藤 伊都子 東京福祉大学, 教育学部, 准教授 (90569708)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 留学生の就職活動 / 縦断的研究 / 研究倫理審査 / 留学生のキャリア形成 / 異文化の対人関係 |
研究実績の概要 |
2018年度は、主に2つの作業を進めた。1点目は、本研究のインタビュー調査および質問紙調査を実施するにあたり、学内の「東京福祉大学倫理・不正防止専門部会」に対し、研究倫理審査を申請し、承認を得たことである。2点目は、縦断的調査の5段階(就活期・入職期・研修期・習練期・経験期)のうち、第一段階である「就活期」のインタビュー調査と質問紙調査を実施したことである。具体的には以下の通りである。 研究倫理審査の必要性:採択された研究の調査実施に際し、「研究計画の遂行において人権保護や法令等の遵守が必要とされる研究課題については、関連する法令等に基づき、研究機関内外の倫理委員会等の承認を得るなど必要な手続き・対策等を行った上で、研究計画を実施する必要」との指摘があった。本研究計画ではインタビューと質問紙による調査を実施するため、本学倫理・不正防止専門部会の審査が必要であった。 申請書の作成:申請書作成にあたっては、縦断研究として前述した5段階すべてでインタビュー調査と質問紙調査を実施するため、10種の調査内容をすべて申請書に含める必要があり時間を要した。調査対象者である協力者に手渡す書類として、「調査協力のお願い」、「調査協力同意書」、「質問紙」、インタビューと質問紙の調査について17の工程を記した「調査の手続き」および「インタビューガイド」についても、各段階の内容を含めたうえで、申請書に添付した。 審査:11月15日に申請し、12月13日付の審査結果通知書を受領し、「承認」という結果を得た。 審査結果を受けて、2019年1月より「就活期」の調査を開始した。3月に卒業を控え、日本で就職を希望し、就職活動を経験、内定を受けて4月より入職予定の留学生に日本での対人関係や今後のキャリア等についてインタビューし、あわせて質問紙調査を実施した。3月24日までに7名の留学生よりデータを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、主に2つの理由により、当初の予定よりやや遅れている。1点目は、本研究計画では、採択以前に第一縦断群として先行して調査を実施していたが、採択後に研究倫理審査を申請することになり、調査時期に変更が生じたことである。2点目は、今年度においては、留学生の事情により調査対象者の確保が困難であったことである。具体的には以下の通りである。 本研究は縦断的研究であり、研究計画では最終調査である「経験期」の調査終了まで2年半近くの期間が必要となる。そこで、採択以前より先行して「就活期」のインタビュー調査を実施していたが、研究計画では各段階で質問紙調査を追加したことや、調査の手続きおよび内容において倫理上の問題はなく進めていたものの、採択により正式に学内の研究倫理審査が必要となり、質問紙の作成や審査等に時間を要することとなった。 上記理由により、今年度の「就活期」の調査には十分間に合う時期に「承認」の審査結果を得たものの、先行して実施していた第一縦断群の「就活期」は承認以前の調査であり、続く「入職期」と「研修期」の調査については、予備調査として数名に実施するにとどまった。また、「習練期」については、調査を実施するには至らなかった。 倫理審査の承認後に実施した「就活期」の調査については、卒業を控えた留学生たちの進学が目立ったこと、つまり日本での就職を希望しているものの実際の就職活動や就職時期が先に延びたことで、今年度は調査対象者を確保することが困難であった。また、内諾を得ていた研究協力候補者であった留学生たちにおいても、就職活動が3月の卒業間近まで続き、4月の入職までの期間が短く調査を実施することが困難であったり、就職先から内定を得ていたものの就労ビザへの切り替えの問題等において、調査対象者になり得ない可能性が出てきたりしたため、実際に協力を得られたのは7名と想定より若干少なかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の推進については、大きく2つの課題がある。一つは、縦断的研究において一番困難であると考えられる研究対象者の継続的な協力の確保である。もう一つは、本研究においては各段階で調査時期がある程度設定されているため、時期を逃さず調査計画を実行することである。今後の具体的な研究計画と対応策については以下の通りである。 第一縦断群は、2018年度に「就活期」の調査で協力者となった7名となった。そこで2019年度は、まずこの7名の「入職期」「研修期」「習練期」の調査を実施する。「入職期」の調査については5月中を予定しており、現在連絡を取りながら調査日を調整中である。順調に実施することができれば、11月開催の多文化関係学会で口頭発表を計画している。 「研修期」の調査については、入職後半年が実施の目安であり10月頃となるが、7名のうち6名がサービス業であり、休日が平日であったり繁忙期は不定期であったりするため、調査日を入念に打ち合わせする必要がある。このため、協力者の負担にならない程度に連絡を密に取りながら進めていくこととする。 「習練期」の調査については、就職1年前後が実施の目安となる。年度末や年度初めは、協力者が多忙で勤務地が移動になることも予測されるため、調査時期を逃さないよう注意が必要となる。そこで、協力者の負担にならないように2月頃より連絡を取りながら様子をうかがい、調査日程は3月から4月の2か月間で調整することとする。 次に、第二縦断群として、2020年の年明け頃を目途に、「就活期」のインタビュー調査および質問紙調査を開始する。調査に向けて、年内に調査協力候補者を洗い出し、内諾を得ておく。候補者は半減する可能性があるため、より多くの候補者確保に努める。また、縦断調査が進むにしたがって期間が空くことになるため、日頃より定期的に連絡を取れる関係を構築しておくようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、採択により正式に学内の研究倫理審査で承認を得る必要があった。そこで審査申請をし「承認」を得たが、先行して実施していた第一縦断群の「就活期」調査は承認以前の調査であり、続く「入職期」と「研修期」の調査については数名に実施したものの、承認前であったため科研費を使用することができず、自費で謝礼を支払った。このため、「就活期」調査を除き、予定していた謝金を使用することがなかった。また、「就活期」調査においても、今年度は留学生の進学や就職状況、ビザの切り替え等の問題により、調査対象者の確保が困難であったため、実際に協力を得られたのは7名と想定より若干少ない人数であった。このため、謝金も若干予定より少なくなった。 2019年度は、2018年度に「就活期」で協力者となった7名の「入職期」「研修期」「習練期」のインタビュー調査および質問紙調査がそれぞれ予定されている。その際の謝金として使用する。また、「入職期」の調査については5月中の実施を予定しているが、順調に実施することができれば、2019年11月開催の多文化関係学会で口頭発表を計画している。本年度の開催地は東京未来大学であり、その際の宿泊費および交通費の使用を考えている。さらに、2020年の年明け頃を目途に、第二縦断群としての「就活期」のインタビュー調査および質問紙調査を実施する予定であり、その際の謝金にも使用する。
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