研究課題/領域番号 |
18K00692
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
内藤 伊都子 東京福祉大学, 教育学部, 教授 (90569708)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 在日外国人のキャリア形成 / 在日留学経験者 / 外国人就労者 / 縦断的研究 / 異文化の対人関係 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本で正規就労者として働く元留学生を対象とした全5段階による縦断研究であり、それぞれの段階で同一調査協力者に対し、職場の状況や日本でのキャリアデザイン等に関するインタビュー調査と質問紙調査を実施する研究計画である。2019年度は、主に3つのインタビュー調査および質問紙調査を実施し、2つの学会で口頭発表を行った。具体的には以下の通りである。 調査①~③:2018年度に実施した第1段階の「就活期」で調査協力者となった7名に対し、①第2段階の「入職期」の調査を5月~7月に、また②第3段階の「研修期」の調査を10月~11月に実施した。この調査協力者7名は第1縦断群であるが、データ数を確保するため、2019年度はさらに、第2縦断群として新たに9名の調査協力者を得て、③第1段階である「就活期」についても2020年2月~3月にかけて調査を実施した。 学会発表:第1縦断群の「就活期」のデータを本年度にまとめ、11月に日本比較生活文化学会第35回研究発表大会(大阪学院大学)にて口頭発表、また、5月~7月に実施した「入職期」の調査についても、同じく11月に多文化関係学会第18回年次大会(東京未来大学)にて口頭発表を行った。 意義・重要性:縦断研究における困難さの1つは、当初の調査協力者から研究調査の過程を通して、最後まで協力を得られるかどうかということである。本研究においては、第1段階の「就活期」で調査協力者となった7名すべてから、続く「入職期」および「研修期」についても協力を得られており、今後、各段階としてだけでなく、変化においても分析可能なデータが得られている。また、第1縦断群の協力者は中国人が多かったのに対し、第2縦断群はベトナム人が多く、在日外国人として多い中国人とベトナム人について、文化背景の違いによる特徴についても見いだせる可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前回の研究実施状況報告書の中であげた2つの課題と具体的な研究計画をほぼ達成することができたため、おおむね順調に進展していると思われる。初年度は、研究倫理審査の承認を得てから調査を開始したため、当初の研究計画より研究全体が後ろ倒しとなったが、その後はほぼ計画通りに進んでいる。具体的には以下の通りである。 まず、本研究においては2つの大きな課題があった。1つは、縦断的研究において一番困難であると考えられる研究対象者の継続的な協力の確保であった。これについては、第1段階で調査協力者となった7名すべてにおいて、その後の第2段階および第3段階の調査においても協力を得られている。 もう1つの課題は、各段階の調査時期がある程度設定されているため、時期を逃さず調査計画を実行することであった。これについても第2段階である「入職期」の調査については、4月に入職した協力者に対し、当初の予定通り5月~6月に実施した。協力者のうち2名については、4月に一旦は内定先に就職したものの、5月の調査時にはすでに退職し、再就職を果たしていた。このため、再就職したときから1ヶ月後を新たな就職先での「入職期」として、改めて再調査も実施した。また、第3段階である「研修期」についても、入職後半年を目安とした計画通り、5名は10月に、再就職をした2名については11月に、時期を逃さず実施できている。 次に、具体的な研究計画としてあげていた11月開催の多文化関係学会での口頭発表および第2縦断群の「就活期」の調査についても、それぞれ達成している。第1縦断群の「習練期」調査については、就職1年前後、すなわち4月~6月が実施の目安となるため、調査協力者には3月に継続的な協力のお願いや調査日の相談について連絡を取っており、現在のところ順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度における研究の推進については、新型コロナウイルス感染症の影響による課題として、大きく2つがある。1つは、対面でのインタビュー調査が困難であること、もう1つは、研究成果を発表する学会の年次大会等が中止や延期の方向であることである。今後の具体的な研究計画と対応策については以下の通りである。 まず、本研究ではインタビュー調査と質問紙調査を実施しており、4月~5月が2020年度の最初の調査時期にあたる。インタビューの実施場所については、依頼時に協力者の希望に出来る限り添う形でお願いしており、これまでは、協力者と相談のうえ、協力者の移動負担が少ない場所で実施してきた。しかし、協力者が居住・就労している場所は、全国的に見て感染者が多い地域であり、協力者に外出をお願いすることも調査者が現地に行くことも困難な状態である。 そこで、非対面によるインタビューを検討している。協力者側の現状やデバイスの使用状況を確認し、心的にも環境的にも協力者に負担がかからないような状態で、分析可能な音声データが得られるように準備を進めている。また質問紙調査についても、郵送やメール添付による送受信で実施するなど、これまでの調査方法とは異なる形で実施する方向である。また、第2縦断群の調査開始により協力者の人数が増え、第1縦断群とは調査時期や調査間隔も異なるため、適切な時期にそれぞれの調査対象者に連絡を取り、継続的な協力を得られるように配慮したり、質問紙の未回収を防いだり、適宜実行していく。 つぎに研究成果の発表については、日本コミュニケーション学会が中止、マカオで開催される予定であった日本語教育国際研究大会が2021年に延期になったことから、オンライン発表を検討している関連学会での発表を逃さず目指していく。また、昨年までに実施した調査や口頭発表の内容について、論文投稿をしていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、調査は順調であったため、調査協力者への謝金は計画通りに使用したが、協力者が協力的であり、希望する調査場所として調査者の移動距離が短い場所が多く、調査にかかる交通費等の旅費はほとんど使用することがなかった。また、2019年度については口頭発表をした学会の開催地も、2会場とも自宅からの移動距離が短く、宿泊費や交通費等の旅費は少額となった。 2020年度の使用計画については、まず調査にかかる費用として使用する。第1縦断群7名の「習練期」のインタビュー調査および質問紙調査を予定している。また、第2縦断群9名についても「入職期」と「研修期」のそれぞれインタビュー調査および質問紙調査が予定されている。その際の謝金として使用する。さらに、対面によるインタビュー調査の実施が可能となった場合には、調査地への旅費としても使用する。 つぎに、学会発表にかかる大会参加費や宿泊費および交通費等の旅費として使用する。発表を予定していた2020年にマカオで開催予定であった日本語教育国際研究大会は、2021年に延期となったが、2020年度内(1月~3月の間)に開催された場合には、マカオまでの交通費や宿泊費、大会参加費として使用する。国内の学会についても中止やオンライン開催が増えているが、関連学会の大会参加費として使用する。その他、論文執筆のために書籍や資料収集費用として使用する予定である。
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