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2019 年度 実施状況報告書

話しことばの記憶の伝承:消滅危機言語とされる宮古島のことばの映像アーカイブ構築

研究課題

研究課題/領域番号 18K00695
研究機関国際基督教大学

研究代表者

藤田ラウンド 幸世  国際基督教大学, 教養学部, 客員准教授 (60383535)

研究分担者 MAHER JohnC.  国際基督教大学, 教養学部, 特任教授 (50216256)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード*マルティリンガリズム / バイリンガル教育 / 言語政策と言語の多様性 / 消滅危機言語 / 子どもの映像ワークショップ / フィールドワーク / 映像のアーカイブ / 心の原風景とアイデンティティ
研究実績の概要

本研究は、3つのプロジェクトを設定している。プロジェクト1は、「映像による話しことばアーカイブ構築」、プロジェクト2は、「映像の背景を可視化するためのフィールドワーク調査」、プロジェクト3は、「子どもたちのための映像ワークショップと映像制作」である。
1)アーカイブ用のコンテンツが「みゃーくふつの未来:消えゆく声、生まれる声」(48分)と「久松アルバム:2015-1019」(13分)の2つが完成した。
2)フィールドワーク調査として、宮古島市内の6つの島のうち、宮古島の久松集落、池間島の池間集落に加え、今年度から伊良部島の佐良浜集落で聞き取り調査などを開始した。3つの島は宮古島市として2005年から統合されたものの、一つ一つの集落の「言語」(または宮古語の「方言」とも捉えることができる)は異なり、宮古島の平良を中心とした標準的な「宮古語」と、池間民族というアイデンティティを持つ集落の池間と、池間から分村した佐良浜の「池間口(宮古語池間方言)」にアプローチできた。引き続き、フィールドでの調査の厚みを追求する。
3)久松小学校の教員の先生方と映像アーティストの服部氏と研究者の筆者の協働作業が実現し、総合学習の時間を使い、1学期に1度、2コマ、2クラスの映像ワークショップを行うことができた。このワークショップを通して2クラス40人、6年生の子ども達は4人グループで映像を毎回制作した。加えて、この映像ワークショップそのものと、子ども達が制作した動画は、スペインのコンペルテンセ大学の「教育のイノベーション・プロジェクト(Proyectos de Innovacion) 2019-2020」と協働という形で、横浜市立大学の英語教師養成クラスと共に参加をし、スペインと日本で英語教師となる大学生たちに宮古島という日本語以外の言語のある地域の子どもたちとして紹介され、映像が共有された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度は、順調に研究が進んだ。
<プロジェクト1:映像のアーカイブ>2019年5月にアーカイブのコンテンツとなる宮古語(みゃーくふつ)のドキュメンタリー映像、「みゃーくふつの未来:消えゆく声、生まれる声(The Future of Myaakufutsu: Vanishing Voices, Emerging Voices)」が完成した。二部構成で、1)宮古島のみゃーくふつの話者の意識に関わるインタビュー調査や地域での言語用の状況を描き、2)若い世代で使用されないみゃーくふつの言語復興の流れとして捉えられる、各地域で努力しているその取り組みを紹介している。出演は、生後6か月から90歳までの幅広い年齢層であり、同時に2015年から2018年までの風景が話者と共に記録されている。この映像に収められなかった大量の撮影データは今後、アーカイブ化の目的で随時コンテンツとして制作する。
<プロジェクト2:フィールドワーク調査>2019年度には7回、宮古島に足を運び、これまで築いたフィールド調査地の宮古島内の久松と池間島の池間の集落に加え、伊良部島の佐良浜の集落でも調査を開始した。この久松、池間、佐良浜の、3つの島の3つの集落でのフィールド調査を論文化するための資料をさらに蓄積し、プロジェクト1の成果としても、3つの映像をアーカイブ化する。
<プロジェクト3:子どもたちのための映像ワークショップと映像制作>2019年度に①久松小学校(校長、教務主任、2名の担任教師)、②映像アーティスト(研究協力者の服部かつゆき氏)、③研究者としての筆者の3者の協働として、総合学習の時間枠の中で、1学期に1度、3回のワークショップを行い、子どもたちが映像制作した。この映像ワークショップ実践は、スペインのコンペルテンセ大学のプロジェクトの一部として、横浜市立大学の教員と学生と共に参加をした。

今後の研究の推進方策

<プロジェクト1>最終年度では、アーカイブを実際に運用することを行いながら、コンテンツとして何が必要なのかを精査したい。今年度も新しいコンテンツを制作予定である。
<プロジェクト2>「言語」においては、言語学の知見では、宮古語には30-40、つまり昔の集落ごとの数だけ言語のバリエーションがあるとされている。現在の標準的だと考えられている平良の宮古語と久松集落の比較、独自の民族だというアイデンティティの強い池間島の宮古語池間口と池間島から分村した佐良浜の池間口の関係性や異なる言語的な特徴があれとすれば、その異なりに着眼をした調査を行いたい。同時に、「文化」において、佐良浜だけに残る鰹節工場といった文化的な遺産、また、伊良部島ならではの砂糖精製工場に関しても、映像としての「文化」の記述をフィールドワークの一環として行う。これは、プロジェクト1用の撮影ともなる。
<プロジェクト3>2019年度の映像ワークショップを経て、iPadで映像を制作した子ども達の追跡調査と、中学に進学した子ども達と映像を制作する予定だったが、新型コロナウィルスの影響下にあり、学校現場に入ること自体が難しくなったため、これに関してはまだ何ができるかは慎重に検討をしている。昨年度、子ども達が制作をした映像をまとめることも視野に入れている。

次年度使用額が生じた理由

2019年2月から3月にかけて、アーカイブ用のウェブサイトページを作成するためにウェブデザイナーの方に頼んでいたが、新型コロナウィルスの影響で、調査や研究の進行が滞り、その余波で3月末までにウェブページ制作ができなくなった。このウェブサイトページに対する謝礼として、2020年度から前倒し金を申請もしていたが、このような事情で予定通りにはいかなかったため、持越しという結果となった。

備考

2019-2020年度にかけてアーカイブ用のウェブサイトを作成中

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 図書 (3件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] Complutense Universidad/横浜市立大学(スペイン)

    • 国名
      スペイン
    • 外国機関名
      Complutense Universidad/横浜市立大学
  • [雑誌論文] アジアの文脈における国際結婚家族とバイリンガル教育:韓国とタイの親が実践する子どものための日本語サークルの考察2020

    • 著者名/発表者名
      藤田ラウンド幸世
    • 雑誌名

      アジア文化研究

      巻: 46 ページ: 91-105

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] From Dante to Fishman: Migration in Sociolinguistics and in the Language Situation of Ireland2020

    • 著者名/発表者名
      John C.Maher
    • 雑誌名

      アジア・アフリカの言語と言語学 (Asian and African Languages and Linguistics)

      巻: 14 ページ: 3-12

    • オープンアクセス
  • [学会発表] Documenting the local voices of the Miyakoan endangered language in the video: a linguistic ethnography of the awareness of their language2019

    • 著者名/発表者名
      Sachiyo Fujita-Round
    • 学会等名
      International Interdisciplinary Conference 2019, On the Move: Indigenous Knowledge, Language and Culture, Tourism and Creative Economy in Asia and Beyond
    • 国際学会
  • [学会発表] 特別シンポジウム 英語以外のCLIL実践について考える:多言語多文化への対応, 消滅危機言語のみゃーくふつの言語復興とCLIL: 宮古島市の小学校での統合的な学習の試み2019

    • 著者名/発表者名
      藤田ラウンド幸世
    • 学会等名
      日本CLIL教育学会第二回大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 消滅危機言語(宮古語)の未来をESDと地域の視点から捉えなおす日時:2019年12月6日 (金) 17:30~19:30場 所:立教大学池袋キャンパス 太刀川記念館3階カンファレンス・ルーム 主催:2019

    • 著者名/発表者名
      藤田ラウンド幸世
    • 学会等名
      文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「ESDによる地域創生の評価とESD地域創生拠点の形成に関する研究」(研究代表者・阿部 治)・ESD地域創生研究センター
    • 招待講演
  • [学会発表] Recognising Multilingual/multicultural Identity at a Local Elementary School: a Classroom Ethnography of Miyakoan Language revitalisation through video workshop2019

    • 著者名/発表者名
      Sachiyo Fujita-Round
    • 学会等名
      The 5th Colloquium, Language Education in Global and Multilingual Context (LEGMC) Research Group
    • 国際学会
  • [学会発表] Japan, Diversity, Language and Culture2019

    • 著者名/発表者名
      John C. Maher
    • 学会等名
      Japan Society for the Promotion of Science
    • 招待講演
  • [学会発表] What is Sign Language?2019

    • 著者名/発表者名
      John C. Maher
    • 学会等名
      Japan Federation of the Deaf
    • 招待講演
  • [学会発表] Japanese Place-Names and Multilingualism in Translation November 1, 20192019

    • 著者名/発表者名
      John C. Maher
    • 学会等名
      Huazhong University of Science and Technology, Wuhan, Hubei, China
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] Routledge Handbook of Japanese Sociolinguistics2019

    • 著者名/発表者名
      Sachiyo Fujita-Round (Chapter 11), Heinrich, P. & Ohara, Y. (eds.)
    • 総ページ数
      464
    • 出版者
      Routledge
  • [図書] Routledge Handbook of Japanese Sociolinguistics2019

    • 著者名/発表者名
      John C. Maher (Chapter 8), Heinrich, P. & Ohara, Y. (eds.)
    • 総ページ数
      464
    • 出版者
      Routledge
  • [図書] Multidisciplinary Perspectives on Multilingualism2019

    • 著者名/発表者名
      John C. Maher (Chapter 6), S. Montanari and S. Quay (Eds)
    • 総ページ数
      422
    • 出版者
      Mouton de Gruyter
  • [備考] 多文化共生を再考する

    • URL

      http:multilingually.jp

  • [備考] 宮古島 伝承の旅

    • URL

      https:miyako.ryukyu

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公開日: 2021-01-27  

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