本年度は3年間の研究期間の最終年度にあたり,外部に研究成果を発表するため,1年目2年目でおこなった研究についてさらに詳細な分析をした。文頭に出現する日本語接続表現リストの再評価をおこない,接続表現の見直し,国語辞典での記載数の確認,接続表現が意味機能の再割当て,基本派生の区別,指示語の有無の識別などをおこなった。さらにコーパスでの出現についても再集計をおこない,接続表現と5つコーパスごとの頻度分布を得た。その結果,日本語学習者が執筆した作文が,日本語母語話者による文章よりも接続表現の使用頻度が高く,なおかつ学習初期で習う接続表現を多用していることがわかった。 これらのデータを元に日本語学習者特有の接続表現の使い方の問題点を見つけ出し,どのような指導をおこなえば効率的に接続表現を学ぶことができるかについて提言をおこなった。本研究の総括として,その結果が計量国語学32巻7号 特集・招待論文A 「日本語接続表現の計量的分析に基づく指導法の提案」 (2020年12月)に掲載された。 本年度後半では,研究成果の一部を書籍の1章として掲載させるための執筆作業もあり,この書籍は2021年半ばに出版予定である。 機能表現のうちの文末表現についても分析を始め,現在は各種文型辞書間での記載項目の重複を確認している。また,一部の文末表現は文頭の接続表現と共起することが確認され,同様に文末表現と次文の文頭の接続表現とも共起することがあることも確認している。今後は事例をもとにどのような文末表現と接続表現が共起しやすいかを分析していく予定である。
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