研究課題/領域番号 |
18K00710
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
齋藤 ひろみ 東京学芸大学, 教育学研究科, 教授 (50334462)
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研究分担者 |
濱田 麻里 京都教育大学, 教育学部, 教授 (80228543)
池上 摩希子 早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (80409721)
石井 恵理子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90212810)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子どもの日本語教育 / 多様な言語文化背景をもつ子ども / プラットフォーム / 実践と研究の相互作用 / トランスフォーメーショナルな場の構築 / 参加のためのことばの教育 / 実践の記述と分析 / 実践・研究のリソースサイト |
研究実績の概要 |
本研究の目的である多様な言語文化背景をもつ子どもたちの教育実践とその研究の相互作用的に発展する場「プラットフォーム」形成のために、下の活動を実施した。成果として、実践・研究の「対話の場」のオンラインによる構築可能性について示唆が得られた。 ①本科研の活動として実施している「子どもの日本語教育研究会」でオンラインによる交流の場を提供した。4月~7月には、オンライン情報交換会「元気かい」を計6回開催し、学校の休校期間の外国人の子どもの学習・生活面の課題やオンライン支援の具体例について情報交換を行った。緊急事態下にある現場のニーズに対応することができた。8月には、ワークショップとして九州・沖縄各地から外国人の子どもへの日本語指導・学習支援・母語支援・地域の活動の状況報告の会を開催した。9月にはその記録動画を公開し意見交換の会を実施した。3月には大会を実施し、国語科教科書の語彙データべ―スcosmosの活用、多文化の子どもの育ちとキャリアをテーマとするパネルセッションを行った。 ②課題プロジェクトチームで、次の検討を進めた。「実践リソースバンク」検討プロジェクトでは実践経験のリソース化に向けた実践分析の枠組みを検討し、「ノウハウ」を超えた「省察のための視点・観点」を構造化して提示することの必要性が確認された。「参加のためのことばの教育」検討プロジェクトでは言語習得と参加をテーマに読書会を重ねた。その結果、参加の道具としてのことばと参加による結果としてのことばという2側面からの捉えと、年齢的発達による認知面と周囲との関わり方の相違に着眼した検討とが必要であることを確認した。 ③上記①②の成果は、「子どもの日本語教育研究会」Webサイトに実践・研究のリソースコンテンツとして掲載した。また、研究・実践のリソースの公開様式の一つとして、Webジャーナル『子どもの日本語教育研究』第3号を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年は新型コロナの感染状況が収束せず、緊急事態宣言や蔓延防止措置の発令等もあり、研究・交流事業を予定通りに実施することはできたなかった。ワークショップ、研究会、大会のプログラムを変更した。ワークショップはオンラインでの情報提供のみとし、研究会は中止、大会は実践・研究の公募を中止した。そのため、「プラットフォーム」としての双方向での実践・研究の交流やそこでの対話を通した新たな関係性の構築を進めることが難しかった。また、実践・研究成果の発表や募集を行うことができなかったため、リソースの蓄積と提供が滞った。その結果、予定していたWebサイトの改修も見送り、次年度の事業として計画を立て直した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の経験を踏まえ、次の方略をもって、プラットフォーム構築を進めることとする。 ①研究課題別プロジェクトチームで、研究会を定期開催し、一部を公開する。「実践リソースバンク」構築ぷろジェクトチームは、実践者による実践報告会を開催し、そこでの議論をリソース化(言語等により第三者に伝達するための表現形式に)する。また、学校や地域で多様な言語文化背景をもつ子どもの教育・支援にあたる実践者が求めるリソースについて検討し、現場の実践者が自身の実践を記述伝達するためのガイドラインの作成を検討する。「参加のためのことばの教育」検討プロジェクトチームは、子どもの日本語教育という文脈における参加概念と参加におけることばの習得の意味を探究するために、文化心理学・学習理論・学習共同体等に関して読書会を定期開催する。その検討結果については、公開の研究会を開催して、広く同テーマについてディスカッションを行う。 ②本研究が主催している「子どもの日本語教育研究会」で研究会と大会をオンライン開催する。実践・研究の報告者・発表者を公募し、全国各地で進められている実践・研究が交流する場をオンライン上で提供する。その場を、上記①の二つの研究課題チームの検討結果を踏まえて、参加者が自身の実践・研究を省察し、相互に学び合える空間として構築する。 ③Webサイトを改修し、上記①②の成果をコンテンツとして蓄積した上で、目的・テーマ別に検索してコンテンツを検索したり、相互にそのコンテンツをめぐって検討を進められるような仕組みを作る。 ④オンラインによる交流の機会が増える中、「プラットフォーム」の機能として、新たに必要となる要素があると考えられる。その点について、研究会・大会参加者へのアンケートを通して、検討する。また、本研究会が発行するジャーナル『子どもの日本語教育研究』に、本研究の成果を論文・報告等として掲載する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度も2019年度に引き続き新型コロナの感染状況が収束せず、プラットフォームの一つの具現形としての集合対面での実践・研究の交流(ワークショップ、研究会、大会等)については一部中止、縮小して実施した。また、科研メンバーによる打ち合わせ、内部研究会などもすべてオンラインで実施した。そのため、予算計上していた旅費や講師謝金等の支出が小さく抑えられ、その分を次年度に繰り越すことにした。また、大会等で実施予定であったアンケート等の実施ができず、その成果をもとに予定していたWebサイトの改修も、次年度の事業として実施することにした。以上の理由で次年度の使用額が生じている。
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