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2022 年度 実施状況報告書

子どもの日本語教育の実践・研究のための「プラットフォーム」構築に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K00710
研究機関東京学芸大学

研究代表者

齋藤 ひろみ  東京学芸大学, 教育学研究科, 教授 (50334462)

研究分担者 濱田 麻里  京都教育大学, 教育学部, 教授 (80228543)
池上 摩希子  早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (80409721)
石井 恵理子  東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90212810)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2024-03-31
キーワード子どもの日本語教育 / 実践と研究の交流 / プラットフォーム / 実践の蓄積とリソース化 / 参加とことば / ワークショップ / オンラインの可能性 / 他団体との協働
研究実績の概要

本科研の活動として子どもの日本語教育研究会を運営しているが、以下1)~4)の実践・研究の成果の交流、及び研究活動を行った。本研究では、実践と研究が交差し新たな意味や価値が創造され活動が展開するプラットフォームの構築を目的としているが、異なる立場・関心の者が集う場の提供という目的は達しつつある。今後は、それぞれの教育者、支援者としての学習サイクルがどのように交差しながら、学習のコミュニティを形成し得るのかを検討することが課題として残されている。
1)2022年7月31日に、ワークショップ「動画を使った外国人の子どもの学習支援―NHK for Schoolを活用して「ことば・教科」学習をデザインする-」をNHKエデュケーショナルとの合同で開催した。成果の一部はNHK for schoolのウェブサイトで紹介されている。
2)2023年3月11日に、子どもの日本語教育研究会第8回大会を開催した。公募した実践・研究の発表が22件、研究会企画のパネルディスカッション2件、本研究会の研究企画委員会による「ことばと思考」に関する検討結果の報告で構成した。その内容は、本研究会のウェブサイトで公開しており、実践・研究のリソースとしての活用が可能である。
3)実践の蓄積とその分析による教育・支援リソース化については、今年も継続的に実践を多角的に検討する研究会を重ねてきた。また、理論面では、内部メンバーの研究会に加え公開の読書会を開き「参加のためのことばの教育」について検討し、その結果を子どもの日本語教育研究会第8大会で報告し、ウェブサイト上で公開した。
4)2022年12月に、ウェブサイト上で、ジャーナル「子どもの日本語教育研究」第5号を発行した。本号には、地域・学校現場の実践報告4件(寄稿3件、投稿1件)を掲載した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナ禍にあり、実践に関する調査研究の実施が難しい状況で3年が経過した。オンラインでの実践の報告には限界があり、令和5年度は、直接実践の場に赴き、その実践のおかれている制度的・社会的・文化的文脈を探るとともに、実践の内実を見る/聞く機会を設ける予定である。現場で収集した情報をもとに、ことばの教育の実践における内容・構成に関する検討を進める。
また、2022年度にウェブサイトを改修する予定であったが、オンラインにおける情報の活用に関する利用者の認識、及び技術面の変化が大きく、それを十分把握した上で改修計画を立てたいと考えたが、それができなかった。そのため、改修自体を2023年に延期した。
オンラインであったことが功を奏した点として、令和4年度に、NHKエデュケーショナルとの共同によるワークショップを開催できたことが挙げられる。オンラインによる教育ニーズの高まりが、この活動の背後にある。NHKよりリソース活用の提案を受け、本研究組織でワークショップを企画し、参加者を募集・運営した。内容は、日本語指導及び教科学習支援における動画活用の可能性について、参加者が実践例や活用のアイディアを紹介し合う活動で構成した。アイディアの一部は、NHK for schoolのサイト(https://www.nhk.or.jp/school/cld-toolbox/)「多言語多文化の子どもたちとどう学ぶ?学習支援ツールボックス」で公開され、同様の実践的課題や関心をもつ教育者/支援者に広く提供することができた。今後とも、社会の変化に応じ、他団体と協働し、研究の実装化の新しい方向性を探っていくつもりである。

今後の研究の推進方策

コロナ禍の3年間は、オンライで研究会を開催するなどの工夫をし、実践者と研究者が交流する場を提供してきた。参加者からは各地の実践や研究の動向を知る機会として高く評価されている。しかし、実践事例と研究知見、つまり道具の開陳が中心になっていることは否めない。今後は、参加者(主体)が成果を目指して、実践・研究を創造するために道具を作り変えられるかどうかにあると思われる。教材や方法論としての定型化した道具を与えられて手にするのではなく、本研究会の活動への参加を通して、直面する困難や内包する矛盾に気づき、その解決のために新しいコンセプトや実践形態を生み出せているのかということである。本研究では、その場として、どのような要素が必要であるかを、探るために研究を継続していく。
また、実践を集積し、その分析をもとに「子どもの日本語教育」の内容の全体像を構図化して描こうとしてきたが、その検討過程で要素化、形式化に陥る恐れがあった。そこで、改めて、実践を丁寧に解釈するという基本に立ち返ることや、そのプロセスを共有することに軸を移す必要があると考えている。さらに、理論面で検討してきた「参加とことば」概念を、実践と研究の方向性や方法論として示しつつ、それらの蓄積のための枠組みとしても機能させていきたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍にあり、ワークショップ、大会等のイベントもオンラインでの実施とした。また、委員会もオンラインに切り替えたことにより、旅費、会場借用料、会場配布資料の印刷代などの支出がなかった。しかしながら、対面での対話・協働作業が困難となったことで調査研究活動・交流活動の実施においては支障が出た部分も大きく、予定通りに検討を深め、成果物の作成・開発を進めることができなかった。特に、実践の現場に関する調査などは、訪問先への配慮なども必要となり、実施を先送りにせざるを得なかった。同じ理由から、ウェブサイト改修のための情報収集が滞ったため、改修を令和6年度に実施することにした。

備考

本科学研究費で運営する子どもの日本語教育研究会のウェブサイトである。多様な言語文化背景をもつ子どもたちを対象とする日本語教育・学校教育・地域支援の実践と研究の相互交流を図り、その現場の成長と関連領域の研究の発展を促進するためのプラットフォーム化を目指している。具体的には日本語教育の実践の集積、子どもの日本語教育の内容・方法の研究、日本語教育実践のためのリソースの開発、成果の公開・発信を行っている。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 図書 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 日本語教育の現場で求められる対応力―子どもを対象とする日本語教育・ 支援現場で―2022

    • 著者名/発表者名
      齋藤ひろみ
    • 雑誌名

      日本語教育

      巻: 188 ページ: 35-51

  • [雑誌論文] 教師に求められることば意識ー多様化する学習者のことばの教育を担うために2022

    • 著者名/発表者名
      浜田麻里
    • 雑誌名

      京都教育大学国文学会誌

      巻: 50 ページ: 31-41

  • [学会発表] 外国人の子どもに対する言語教育ー学校における外国人児童生徒等への日本語指導の焦点を当ててー2022

    • 著者名/発表者名
      齋藤ひろみ
    • 学会等名
      日本語学会 2022年秋大会
    • 招待講演
  • [学会発表] グルーバル化で求められる高等学校段階の教育とその課題ー「外国人生徒教育」に見る包摂性と公正性からー2022

    • 著者名/発表者名
      齋藤ひろみ・見世千賀子・武内博子
    • 学会等名
      異文化間教育学会第43回大会
  • [学会発表] 高等学校における外国人生徒等への日本語教育の現状と課題ー質問紙調査の結果からー2022

    • 著者名/発表者名
      齋藤ひろみ・武内博子・南浦涼介
    • 学会等名
      日本語教育学会2022年春季大会
  • [学会発表] ICTを活用したことばの教育-子どもへの日本語・教科学習支援における実践的展開から2022

    • 著者名/発表者名
      齋藤ひろみ・衛藤景太・田所希衣子・能城黎・川上さくら・米本和弘
    • 学会等名
      子どもの日本語教育研究会第8回大会
  • [学会発表] 高等学校における日本語指導の取り組みー学校設定教科・科目に着目してー2022

    • 著者名/発表者名
      工藤聖子・武内博子・見世千賀子・齋藤ひろみ
    • 学会等名
      東京学芸大学国語国文学会令和5年度大会
  • [学会発表] 多様な言語文化の背景を持つ子どもの成長を育む環境づくりの新展開ー連携の「いま」と「これから」2022

    • 著者名/発表者名
      大菅佐妃子、中川祐治、山田拓路、浜田麻里
    • 学会等名
      子どもの日本語教育研究会 第8回大会
  • [学会発表] 子どもの「参加」を支えることばの力とは何かーあらためて「学習言語」を問い直すー2022

    • 著者名/発表者名
      内田千春、小川珠子、河野あかね、立山愛、櫻井千穂、齋藤ひろみ、髙橋美奈子、浜田麻里
    • 学会等名
      子どもの日本語教育研究会 第8回大会
  • [学会発表] 「継承日本語教育」を問い直す-バンコクの親子日本語教室の実践事例から-2022

    • 著者名/発表者名
      深澤伸子・西島阿弥子・池上摩希子
    • 学会等名
      韓国日本語学会第46回国際学術発表大会
  • [図書] 外国人の子どもへの学習支援2022

    • 著者名/発表者名
      齋藤ひろみ編著、池上摩希子・浜田麻里他著
    • 総ページ数
      112
    • 出版者
      金子書房
    • ISBN
      978-4760895595
  • [図書] 外国につながる子どものための日本語教育2022

    • 著者名/発表者名
      西川朋美編著、窪津宏美・櫻井千穂・池上摩希子・齋藤ひろみ・バトラー後藤裕子・中石ゆうこ・高橋朋子著
    • 総ページ数
      199
    • 出版者
      くろしお出版
    • ISBN
      978-4874249208
  • [図書] 異文化間教育事典2022

    • 著者名/発表者名
      異文化間教育学会編、齋藤ひろみ編著、池上摩希子・浜田麻里他著
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      978-4750353999
  • [図書] 最新教育動向2023 必ず押さえておきたい時事ワード60&視点1202022

    • 著者名/発表者名
      教育の未来を研究する会編、齋藤ひろみ他著
    • 総ページ数
      264
    • 出版者
      明治図書出版
    • ISBN
      978-4183537355
  • [備考] 子どもの日本語教育研究会

    • URL

      https://www.kodomo-no-nihongo.com/

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公開日: 2023-12-25  

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