研究課題/領域番号 |
18K00714
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
古本 裕美 長崎大学, 留学生教育・支援センター, 准教授 (80536326)
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研究分担者 |
迫田 久美子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, 客員教授 (80284131)
山内 豊 創価大学, 教育学部, 教授 (30306245)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シャドーイング / 海外日本語学習者 / 教材開発 / 国際研究者交流 / 自動評価システム |
研究実績の概要 |
海外の日本語教育における教材不足という現状を踏まえ,国内外の共同研究者13名と共に,海外日本語学習者の運用能力を向上させるためのシャドーイング教材を完成させることが本研究の目的である。2019年度は,主に以下の4つを行った。
(1) シャドーイング指導に関する書籍の出版:本研究にかかわる9名が執筆者となり,今まで我々が国内外で行ってきたシャドーイング研究の成果を1冊の書籍として出版することができた。その書籍の中には,本研究で開発中のシャドーイング教材の一部も含めることができた。書籍の出版は当初の計画にはないものであったが,本研究における大きな成果の一つとして位置づけられる。 (2) 国内外日本語学習者を対象とした日本文化に関する興味・関心度調査:現在開発中のシャドーイング教材のトピックは,2015年度に行われた興味・関心度調査の結果に基づき選定されている。その調査から5年経過した現在も本教材で採用されている内容が日本語学習者に興味・関心を抱かせるものであるかどうかについて検討するために,追跡調査を開始した。2019年度末までに,日本,台湾,米国にて約750名のデータを収集した。 (3) シャドーイング教材の修正と補充:開発中の教材(24ユニット分)に対する2018年度修正案に基づき,(a) より適切な日本語表現への変更,(b) 表記の統一,(c) 挿絵の追加,(d) 日本語能力試験のN5レベルの教材作成,(e) 教材音声の収録と編集を行った。 (4) シャドーイング音声の自動評定システムの開発:日本語学習者の日本語能力テストの結果とシャドーイング音声のデータを用いて,シャドーイング音声から日本語能力テスト得点を予測する回帰式を計出し,自動評価システムのプロトタイプを構築した。しかし,後述の理由により,再度データを収集することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 本研究の研究代表者,研究分担者,研究協力者の9名がかかわり,日本語のシャドーイング指導に関する書籍を出版することができた。本書籍の出版は当初の計画にはないものであったが,現在までに我々が国内外で行ってきたシャドーイング研究の成果を分かりやすくまとめ,日本語教師が授業にシャドーイングを取り入れる際のヒントを提供する書籍として完成させることができた。 (2) 2019年度後期から2020年度前期にかけて,国内外日本語学習者の日本文化に関する興味・関心度調査を実施しているところである。新型コロナウイルス感染症により各研究者の勤務校での業務と研究体制に影響が出ているが,質問紙調査をオンライン調査に変更するなどして予定の約2/5の数のデータを収集することができた。 (3) 2019年度前期に加えて年度末にもシャドーイング教材の音声収録を予定していたが,年度末は新型コロナウイルス感染対策のため密室での収録を中止した。 (4) シャドーイング音声コーパス構築のためのデータ収集時に,対象パッセージの練習を行った後の音声データを収集していたため,当初に目的としていた日本語熟達度を反映する音声コーパスの構築は十分に達成できなかった。
これらの理由により,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,「教材開発チーム」は,(1) 国内外日本語学習者の日本文化に関する興味・関心度調査の継続実施と分析,(2) シャドーイング教材の最終調整を行う。新型コロナウイルス感染症対策のために新たな音声収録ができない可能性もあるが,収録済の音声編集を完成させた後に,研究協力者と共に教材の内容と形式をオンラインで精査する。「システム開発チーム」は,個別実験が再開できる状況になり次第,研究協力校にてデータ収集を行う。「実践研究チーム」は,開発した教材を用いてシャドーイングの効果検証や教材自体の効果研修を行い,学会や研究会にて成果発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1) 2019年度末にシャドーイング教材の音声収録が中止されたこと,(2) 自動評価システムの開発に遅れが生じたこと,(3) 2019年度末に出張が中止されたことが原因で,未使用額が生じた。これらの未使用額は,2020年度に行われる教材音声の収録・編集と自動評価システムの再構築に必要な謝金,成果発表時に必要な旅費としてそれぞれ充てられる計画である。
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