研究課題/領域番号 |
18K00718
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
加藤 好崇 東海大学, 国際教育センター, 教授 (20297203)
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研究分担者 |
宇佐美 まゆみ 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, 教授 (90255894)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | やさしい日本語 / 観光接触場面 / インバウンド / ツーリスト・トーク / 異文化コミュニケーション / インターアクション / 言語問題 |
研究実績の概要 |
本年度は,インバウンド増加に伴って生じる、日本人ホストと外国人ゲストの言語問題の解決方法の一つとして、「やさしい日本語」を提唱・実践する年と位置づけていた。観光場面のやさしい日本語は,自然な接触場面で通常生じにくいので、言語調整及び運用調整を多くの人に認知してもらうように努めた。計画は予想以上に早く進み、まず2019年6月にシンポジウム開催、7月に関連書籍出版,その後複数のセミナーが開催された。ただし、筆者の意図通り「観光のためのやさしい日本語」が認識されたわけではなかった。2020年度はあらためて正しく認識してもらった上で実践をしてもらい、その談話分析を行いたいと思っている。以下が、2019年度の本年度実績となる。 ①2019年6月23日14:00~17:30『インバウンドで使うやさしい日本語-外国人旅行者とのコミュニケーションを考える』(場所:東海大学高輪校舎大講堂)基調講演:富士ゲストハウス代表・観光庁ビジットジャパン大使髙橋正美氏、その他東京外大荒川洋平教授、福岡市役所、美唄市役所などからやさしい日本語の実践報告を行ってもらった。②2019年7月『「やさしい日本語」で観光客を迎えよう-インバウンドの新しい風ー』(大修館)刊行③2019年8月7日13:00~18:30ポスターセッション「職場における『やさしい日本語』を媒体として異文化共生の促進」『東海大学産学連携フェア』④2019年7月10日14:00~16:00『日本語で外国人と話す「やさしい日本語」活用セミナー』(岩見沢市観光協会)⑤2020年2月3日10:00~11:30特別セミナー「観光におけるやさしい日本語」(ヒューマンアカデミー福岡校)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記にも記した各実績状況は、当初の予定を遙かに上回るものとなった。この点は、多くの観光現場で、言語問題が明らかに顕在化しており、その解決方法が求められていることの証明となった。しかし、「観光のためのやさしい日本語」が単に言語調整をすれば観光接触場面で使用可能であるという捉え方をされる傾向があり、楽しさや,親しみやすさを感じさせなければならない観光現場でどのように運用するかについては無視されることがあった。また、「観光のためのやさしい日本語」の機能に関しても明確に認識されたとは言えない。ただし、まず多くの人に観光現場での日本語そのものの効用を認識してもらう最初の一歩を踏み出すことはできた。今後は、さらに観光現場での言語使用の実態調査と共のやさしい日本語使用の実践活動を積極的に行って行きたい。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に関しては,複数の地域,施設に「観光のためのやさしい日本語」が言語問題解決の一つの方法であることを意識してもらうことができた。その結果、それぞれの地域,施設で独自にやさしい日本語を発展させようとし始めている地域も見られるようなった。そういった場所については今後どのような言語変容,そして運用の変容が見られるようになるか引き続き観察を行って行く予定である。そういった地域での試みのなかに、本研究がこれまで想定していなかったやさしい日本語の新たな機能が見いだされる可能性がある。一方で、やさしい日本語の導入をいったん試みても、その場限りで終わっているところも多くあり、その理由についても調査を行っていくつもりである。 しかし、慢性的な言語問題を抱えている観光現場はまだまだ多いとはずである。2020年度は,そういった言語問題が大きく意識されていると考えられるいくつかの地域を訪問し、参与観察、インターアクション・インタビューなどの手法を用いて、現段階での言語問題の傾向、そして抱えている問題解決のための一つの可能性として、「観光のためのやさしい日本語」の使用についても提案していきたい。 ただし、提案に際しては2019年度に課題として顕在化してきた、「観光のためのやさしい日本語」が、言語調整だけを行えば、効果を発揮するという捉え方ではなく、その運用調整も同時に重要なのだという面を強調して実践の援助をしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は41,603円と大きな金額ではなかったものの、今年度はこれまで以上に「観光のためのやさしい日本語」を各地で実践する機会が多くなり、想定された予算が必要でなくなった場合、逆に必要になった場合などが生じた。次年度も地方での実践が必要になるため、旅費に充てていきたい。
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