研究課題/領域番号 |
18K00719
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
毛利 貴美 岡山大学, グローバル人材育成院, 准教授 (60623981)
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研究分担者 |
古川 智樹 関西大学, 国際部, 准教授 (60614617)
中井 好男 同志社大学, 日本語・日本文化教育センター, 助教 (60709559)
寅丸 真澄 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 准教授 (60759314)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 講義理解 / ストラテジー / マルチモーダル / ノートテイキング / メタ言語 / 聴解 / 映像コンテンツ / Can-do statements |
研究実績の概要 |
令和2年度は、毛利他(2019)の講義理解のCan-do Statementsを援用し、理解を促進すると考えられるストラテジー「ノートテイキング」「メタ認知」「推測と予測による理解」「非言語とフィラー」「社会的ストラテジー」に特化した映像コンテンツを制作した。それぞれのストラテジーに3つのステップがあり、講義動画(Step1:5~10分)と、タスク用講義動画(Step2:10分~20分)、解説動画(Step3:10~20分)、初回と最終回の理解テストを含め、全8回で終了する構成とした。 調査の方法は、まず、日本の5つの大学に所属する大学予備教育課程および大学学部生の外国人留学生51名を対象とし、オンラインにて全8回の授業を実施した。その後、回収された44名のノートと振り返りシートの分析を行った結果、講師の発話100文字あたりのノート記述文字数の平均は、第1回目が4.56文字であったのに対し、最終回が5.90であり、学習者のノート記述数に差があるかt検定を行ったところ、有意差が確認された(t(43)=3.138、 p<.01)。この結果からノートの文字数が増加したことが確認された。また、最終の理解テストのコメントを収集し分析した結果、「ノートのメモの配置(36名)」「トピックを分けて書く(32名)」「キーワードが書けた(32名)」の項目で7割以上が初回よりも改善したと記述していた。 以上の結果から、当該教材を使用した講義理解のストラテジー・トレーニングを経て、ノートの記述法や聞き取りなどのストラテジーに対する意識化があったと考えられた。この結果については、2021年8月9-11日に行われる第9回CASTEL/J(Computer Assisted System for Teaching & Learning / Japanese)国際学会の口頭発表に採択され、報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、講義理解能力育成のためのWebベースの動画教材の効果検証のために調査を実施した。まず、4月の新学期から日本の5つの大学の予備教育課程もしくは初年次の外国人留学生(合計51名)を対象とし、Webベースの動画教材を用いたストラテジートレーニングを行った。また、最初と最後の合計2回に渡り、調査協力者に対して、Can-do Statemenおよび理解テストによる調査を行った。加えて、談話のポイントがノートに書き取れているか確認するために、ノートの写真も回収した。業者に依頼し、44人分のノートの全ての言葉をデジタルの媒体上に文字化を行った。 当初の研究計画に相当するデータは収集できているが前年度の遅れの影響から約半年遅れてデータ収集したため、分析が必要なデータがまだ残されており、令和3年度に全ての分析を終了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の調査の結果、調査対象者51人からの講義理解のストラテジーに特化したトレーニングビデオに関する詳細なフィードバックとノートの結果(写真画像)を得ている。これらのデータをもとに、理解テストおよびノートの内容の分析と効果検証を行う。加えて、調査対象者のフィードバックから、トレーニングに使用したビデオ教材の改善や再度の編集、Webサイトの設置を行う。最終的には、当初の研究計画に記述した通り、外国人留学生が広く使用可能な学習リソースとしてWeb上に公開する予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、当初予定していた電子ペンを用いた対面での調査ではなく、オンラインでの調査が必要となり、計画の変更を余儀なくされた。そのため、令和2年年6月から8月にかけてZOOMを用いて一斉に調査を実行する方式に変更した。電子ペンを用いた調査で使用しなかった予算分は動画の編集とWebサイトの制作および令和3年度の学会発表の経費に使用する計画である。
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