研究課題/領域番号 |
18K00720
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
池上 摩希子 早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (80409721)
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研究分担者 |
齋藤 ひろみ 東京学芸大学, 教育学研究科, 教授 (50334462)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | JSL児童 / JSLカリキュラム / 協働的実践 / 内容重視(CBI) / 教科指導 |
研究実績の概要 |
初年度には,墨田区A小学校と浜松市内にあるJSL児童対象の算数科支援教室Bのふたつの教育現場で協働的実践を行った。2019年度においても,引き続き,これらの現場で研究活動を進めた。A小学校においては,(1)JSL算数科の研究授業を対象に,授業観察と授業へのコメントを行う(2)JSL算数科に関する共同研究を行い,成果を公開する機会を意識的に設ける,といったものである。支援教室Bにおいては,(1)研修会の講師としての立場から,実践の記述の仕方に関するアドバイスを行う(2)記述された実践をJSL児童に対する算数指導のリソースとして集約する,といったものである。 A小学校で続けてきた試みは,今年度,グループ研究として具体化することができた。「子どもたちの「日本語で学ぶ力」を生かす授業」をどのように組み立てるかを協議し(9月),第6学年算数科研究授業のテーマと関連づけた(11月)。学校現場では,日本語教室での日本語指導を通常学級での指導に生かすにはどうすればよいか,という課題を持ち続けている。本研究においては「JSL児童に対してどのような日本語支援を行うことが,算数科の学習内容の理解を進めることになるのか」という研究課題を探求しており,これまでに,JSL児童が理解しづらい概念や算数の用語,定義を一部抽出している。また,単元でのつまずきが日本語の理解不足からかどうかを校内研究で意識化した。これにより,学級担任は日本語教室での児童の実態を把握し,在籍学級での支援につながっている。 支援教室Bでは主としてリソース集の作成と出版に向けての準備を行った。支援者が持ち寄ったアイディアや原稿にフィードバックをし,改訂をしていったが,この作成の過程を研修として位置づけることができた。ふたつの教育現場との協働的実践で得られた研修や協働の進め方は他の教育現場でも活かせるものであり,共有を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の具体的な目標として,(1)A小学校における共同研究事業,(2)支援教室Bで集約した活動事例集の正規出版 の2点をあげて研究活動に取り組んだ。しかしながら,新型コロナウイルスの影響で2月,3月に予定していた研究出張が実施できなくなったことから,特に(2)については進められていない。事例集の原稿をとりまとめたものの,研修を経て改訂していく段階の途中にあるのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況に遅れは見られるものの,計画自体の大きな変更は予定していない。ふたつの教育現場との関係は保てていることから,2019年度から次年度に持ち越した課題は,引き続き,遂行に向けて進めていくことができる。A小学校での共同研究は継続するが、支援教室Bで集約した事例集をかたちにすることを優先させる。次年度は研究の最終年度にあたるので,成果の発信に努めていく。その際には,ふたつ現場から得られた知見を統合しながら,より汎用性の高い内容にすることを意識する必要があると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた研究出張,研究会が新型コロナウイルスの影響で実施できなくなったため,出張旅費と学会開催の費用(講師謝金、印刷費)に該当する支出がなかった。次年度は最終年度であるため,本来は多くの調査は予定していなかったが,今年度使用しなかった助成金予算をもって課題遂行のための調査を継続する。研究会はオンラインで実施する可能性も残されているが,状況を見ながら対面で実施する方向で考えている。
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