2022年度は、文献資料の収集・検討及び1910年代、20年代の台湾・朝鮮の日本語普及を総括することが予定されていた。文献資料に関しては、前年度に引き続き、国内関連機関にて、またオンラインで国外の機関所蔵の戦前の内地、台湾、朝鮮で刊行された新聞、雑誌、著書を収集、検討した。当該年度も感染症拡大に伴う移動制限のため資料収集に制約を受けたが、可能な範囲での資料の収集と検討を行い、論文を執筆・発表した。 朝鮮地域は、調査対象を1910年代に絞り、資料整理を試みた。『黄海道例規集』第六編 教育、朝鮮教育大観社『朝鮮教育大観』(1930年)、『寺内正毅関係文書』、『桂太郎関係文書』、『宇佐美勝夫氏之追憶録』、『木内重四郎伝』、『朝鮮行政』、『京城日報』、『朝鮮憲兵隊歴史』等を検討した。藤森の研究との関連では、朝鮮における「国語捷径」記事(『毎日申報』1912年9月~1913年3月、約100回連載)、日本語入門の収集、朝鮮における1930年代末の社会教育教科書『国語教本』(朝鮮総督府発行、1939年)の入手、1910-20年代を中心とした「国語」講習、社会教育関係史料の収集を行った。 台湾地域は、前年度に引きつづき、『台湾日日新報』等の新聞記事、『台湾教育』『語苑』等の雑誌記事等を収集し、台湾教育会から刊行された社会教育用日本語教本『国語捷径』(1915)を検討、論文を執筆した(「1910年代・20年代台湾の社会教育における「国語」教育ー『国語捷径』(1915)を中心にー」『植民地教育史研究年報』第25号)。井上の朝鮮資料提供から当時、『国語捷径』が内地、朝鮮、台湾で見られたことが確認できた。
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