研究実績の概要 |
今年度の研究実績としては主に2点あげられる。 1)CEFRは2018年に「CEFR Companion Volume with New Descriptors」を発表し最初歩レベルであるPre-A1レベルを追加するなどの改定を行った。これに対応するために新しく加わった読解のPre-A1レベルにある能力記述文(Can-Do Statement, 以下CDS)7個に対応すると思われる例文を更に収集した。Pre-A1レベルは従前のレベル群(A1~B2)との難易度に大きな差があると考え,例文を全てのCDSに一度に分類する手法に対し,先にPre-A1レベルと従前のレベル群のいずれかを判定(2値分類)した後,CDSに分類するという階層的CDS分類を試みた。その結果,総体的には精度は改善したと考えられるが,1つの例文に対して予測するCDSの数が平均2.76個に対して約2倍の数の推測を行ったため,必然的に正の適合率に良好な結果が得られなかった。 2)前年度実施した日本語読解テストにおける受験協力者を対象に実施したアンケートの分析を行った。アンケートは質問ごとに解答するときに使用したと思われる行動を選択肢から選んでもらうパート(Weir, Hawkey, Green & Devi. 2009 : Wu. 2011 : Box. 2013を参考にした)とテスト全体へ感想を求めるパートで構成されている。解答行動に関しては全受験協力者53名を得点上位群(得点上位約1/3にあたる17名)と得点下位群(得点下位約1/3にあたる17名)に分けて分析したところ,得点上位群はレベルや文章タイプに合わせて解答行動が多様であるに対し,得点下位群は単調であることが明らかになった。自由記述については文字サイズの小ささや可読性の悪さに関する指摘があった。
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今後の研究の推進方策 |
1)一つの例文に対する予測個数が多いので,予測数を減らすためにより詳細な特徴量を作成する。 2)これまでの研究で開発した「日本語CEFR読解指標(CDS)推定支援Webアプリケーション」は現在A1~B2レベルの27個のCDSに対するプロトタイプが実装済みであり,Pre-A1レベルも含めて着手する。 3)日本語読解テスト開発で使用した「日本語CEFR読解指標(CDS)推定支援Webアプリケーション」から提示されるCDSとの適合度の高い例文を作問依頼者に複数提示し,作問しやすい例文の特徴を分析する。 4)日本語読解テストの追加開発,実施をする。
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