1)コーパスを作成する際、例文にCEFRの読解力を表すCDS(能力記述文)を付与する労力を軽減すべく、その自動分類の実装に継続的に取り組んでおり、既に「日本語CEFR読解指標(CDS)推定支援Webアプリケーション」(以下、Webアプリケーション)を開発している。同Webアプリケーションの精度改善を目的として、34種のCDSを対象に実験を行った。第1段階として推定対象の文章の難易度からCEFRレベルを推定し、その後CEFRレベルに属するCDSのみを対象としたCDS推定を行った結果、先行研究で得られた精度に対しf値ベースで約7%向上し、実利用に向けて精度改善がなされたことが観測された。 2)Webアプリケーションが提案するCDSとの適合度が高い上位5例文が、①CDSとどのくらい一致しているか(以下「一致度」)と②CDSで記述されている「(読解)行動」を問える問題にどのくらいできるか(以下「作問可能度」)の2点から調査を行った。昨年度調査できなかった「情報や要点を読み取る」、「説明を読む」、「読むこと全般」を対象にし、4名の評定者が一致度と作問可能度から評定をした。その結果、次の点が明らかになった。①「情報や要点を読み取る(30例文)」との「一致度」はやや相関あり、「説明を読む(15例文)」との「作問可能度」とは弱い相関があった。②昨年度の調査ではB2レベルのCDSの例文は評定者による評定点が低い傾向があったが、今回の調査ではB1・A2・A1レベルのCDSの例文において評定者による評定点が低かった。③B1レベル以下の例文の場合、背景知識や前提知識を要求する例文や専門用語が多い例文、想定レベルに合わない難しい単語が使われている例文が評定者の評定点が低かった。④A2やA1レベルの場合、文章量が少ないと作問が難しいと判定される例文もあった。
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