研究課題/領域番号 |
18K00725
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
平田 裕 立命館大学, 言語教育情報研究科, 教授 (00340753)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 日本語学習者の脳活動 / 近似性と相違性 / 筆記テストと会話 / fNIRS |
研究実績の概要 |
この科研費プロジェクトは5年計画であるが、初年度の2018年度に脳実験の筆記タスクのデザインを過去の研究で採用していたものから大きく変更した。プロジェクトの2年目にあたる今年度、2019年度は前年度の研究方法を基本的に継続し、脳実験によるデータの収集と蓄積したデータの分析を行った。2019年度は、①初級7名、②中級9名、③上級7名の合計23名の日本語学習者を対象として脳実験を行った。実験協力者の母語は、中国語、広東語、英語、フランス語、タイ語である。 これまで収集したデータの分析は、超級の学習者1名、中級後半の学習者2名(母語は3人とも中国語)を対象として分析を行った。超級の1名に関しては、「呼応関係を持つ穴埋め」と「自由作文」が脳の賦活度が高く、右脳側が大きく反応しているという点で日本語会話タスク時の脳活動との類似性が見られた。 中級後半の2名に関しては、トレンドグラフの分析の結果からも、相関分析の結果からも、今回の実験協力者の間で脳の働きに一貫した傾向は見られず、これまでの研究結果と同様、個人差が大きいことが確認された。また、fNIRSの酸素化ヘモグロビンデータと脱酸素化ヘモグロビンデータのどちらを指標にすべきかという点では、引き続き脱酸素化ヘモグロビンデータに注目する意義が確認できた。 正の高い相関を示すチャンネルが多いほど近似性が高いと判断する場合、1名に関しては四択タスクが日本語会話に一番近いと考えられ、もう1名に関しては読解タスクが1つの候補になると考えられるという結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の実験では、23名を対象として脳データを収集することができた。これは当初計画の20名と比べても十分な人数であり、前年度の15名から実験数を増やせたという点で順調であると言える。 実験対象者の募集、物理的な実験準備、実験補助者募集、実験の練習、実際の実験でのデータ収集まで、特に大きなトラブルなく実施できている。また、データ分析に関しても、今のところ想定していた水準である。
|
今後の研究の推進方策 |
今回の5年計画のプロジェクトでは被験者の個人差(母語、日本語力など)、筆記テスト形式、テストの内容と難易度、会話のトピック、脳実験の測定部位などの変数の違いによって脳活動の近似性・相違性がどのように違ってくるのかというところまで、より詳細に把握することを目的としている。2019年度の分析結果として、筆記タスクの種類で脳活動の近似性を見るだけでなく、近似性を上げるその他の要因や条件など更に細かい視点での分析・考察も必要であるという方向性も確認できた。これらの知見を踏まえて、実験方法の見直しや調整を検討する。 2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、人を対象とした実験を実施できるかどうか見通しを立てるのが非常に難しい。実験が出来ない間は、研究方法の検討・改善や、これまで蓄積したデータの分析作業など、出来る内容を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
残高は38,000円程度であったが、5年間の事業期間の2年目としては問題のない範囲だと考えている。通常であれば、実験対象者の人数を調整したり、分析作業に使うための事務用品や印刷代などで適切に執行できるものと考えられる。しかし、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、実験の実施、学会参加など、見通しが立たない部分が大きい。予算執行に関しては十分な検討・対応を行う。
|