本研究は、最終年度前年度応募に採択されたことにより、2021年度までとなるものである。2019年度までの実績としては、① 超級の1名に関して、「呼応関係を持つ穴埋め」と「自由作文」が脳の賦活度が高く、右脳側が大きく反応しているという点で日本語会話タスク時の脳活動との類似性が見られた。②中級後半の2名に関しては、トレンドグラフの分析の結果からも、相関分析の結果からも、実験協力者の間で脳の働きに一貫した傾向は見られず、これまでの研究結果と同様、個人差が大きいことが確認された。③fNIRSの酸素化ヘモグロビンデータと脱酸素化ヘモグロビンデータのどちらを指標にすべきかという点では、引き続き脱酸素化ヘモグロビンデータに注目する意義が確認できた、などの知見が得られている。2020年度は新型コロナ感染症の影響で脳実験を行うことが全くできなかったため、これまでのデータ分析と筆記タスクのデザイン検討などに注力した。分析の結果、日本語会話との近似性を追求するには、特定の個人に対しては、四択タスク、または、和文読解タスクが候補となり得るという考察に至った。 本研究は留学生を対象としているため、コロナ禍の影響が大きく、2021年度も脳実験を行うことができなかった。2020年度と同様、データ分析と筆記タスクのデザイン検討などに注力した。これまでの研究では、主に右利きの学習者のデータを分析対象としてきたが、今回の分析では、新しく、弱い左利きと判断される学習者の脳活動を検証した。その結果、①この実験協力者はどのタスクでも左脳・右脳のどちらかが明確に優位ではない、②全体的に日本語会話時の方が母語会話時よりも脳の活性化度が低く、左脳・右脳の差も顕著ではない、③脳の活性化度だけで判断すると、筆記タスクの中では並べ替えタスクが脳を一番活性化し、会話時の脳の活性化度に近いと考えられる、という知見が得られた。
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