研究実績の概要 |
コロナ禍が最後まで収束することはなかったため、今年度をもって最終年度とした。日本人学習者のリスニングの弱点を検証する追実験についてまとめた。シャドーイングのメイン機能であるリスニング力(特にボトムアップ処理)の向上において、日本人学習者の苦手な点を把握する必要性を感じたからである。53名の日本人学習者のデータを分析した。実験内容は、2000語レベル以下の容易な文章を3つ聞いて、それを書き取りおよび内容理解(日本語で内容を書きだすタスク)した。そのデータを分析した結果、書き取り(dictation)は、80%弱の出来栄えで、内容理解に関しては、70%弱であった。それら二つのスペアマン相関係数は.56であった。そして、たとえ簡単な語彙であっても、リスニングになると聞き取れないケースは多々あり、特に日本語にない/r/の発音やtheyをtheir, thereを聞き間違えたり、sonとsunを間違えたりするケースも見られた。これらにより、正しく内容理解するための聞き取りの重要性は改めて確認され、シャドーイング指導においても、その点はこれまで以上に強調する必要性も改めて確認された。従来のシャドーイング研究ではあまり注目されなかったが、国際共通語としての英語という枠組みでのシャドーイングという位置づけにおいて、シャドーイングと密接に関係のあるリスニングの点で、より細かくどのようなポイントに気を付けるべきかを示唆した。
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