研究課題/領域番号 |
18K00734
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
松浦 浩子 福島大学, 経済経営学類, 教授 (70199751)
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研究分担者 |
千波 玲子 亜細亜大学, 国際関係学部, 教授 (10227332)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | beliefs / 教職課程学生 / 中学校教師 |
研究実績の概要 |
本研究は、一般的に学校現場で扱われる米語ではなく、その他の英語変種を教室に導入するのに適した英語習得時期について考察することを目的としている。平成30年度に実施した日本人大学生と中学生を対象とした調査からは、英語発音に対する好みが中等教育前半時期に形成され、固定化されることが示唆された。これを受けて、令和元年度は、世界の多様な英語を中学校で扱うことについて、英語教職課程履修生と中学校教師がどのような考えや思い(beliefs)を持っているのか明らかにすることを目標に、東北地方と首都圏の大学、および教員の勤務する複数の中学校でアンケート調査を行った。 調査に参加した67名の学生と48名の教員は、中学校で英語変種を扱うことに概ね肯定的態度を示したが、回答を詳しく分析すると、参加者個々の持つ背景によって考えには相違があることがわかった。留学経験のある学生は、英語変種は聞き取りにくく、中学生には負担になるだろうから英米語を優先すべきであると考える傾向があった。このような保守的思考は、彼らが留学で自文化以外に触れたグローバル経験者である事実から見るとパラドックス的な結果といえるだろう。一方で、留学経験のない学生はより理想主義的で、中学校でも変種を扱えると比較的容易に考える傾向が見られた。教師は自身の年齢や留学経験の有無にかかわらず、検定教科書で英語変種に関する記載があれば教えることは可能である、という学習指導要領重視主義・教科書重視主義の者が大多数であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、世界の多様な英語を中学校で扱うことの是非について、教員を目指す学生と現役中学校教員がどのような考えや思いを持っているのか明らかにすることを目標とした。オンラインと紙版によるアンケート調査により、地域の異なる5大学に在籍する学生、および様々な年代の教員から十分な数のデータを集め、回答を分析することができた。新型コロナウイルス問題で、成果発表を予定していた複数の学会大会が中止となってしまったことは予想外であったが、早期の論文発表を目指して原稿執筆を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、世界の多様な音声英語を使用した授業を英語習得段階の異なる2グループ(中学生と大学生)を対象に実践し、その効果について検証する。検証する観点はリスニング力と受容態度の2点である。一定期間、多様な英語に触れることによってどのような効果が期待できるのか、事前事後のテストやアンケートの結果から分析を試みる。なお本研究では、各英語変種の音声学的特徴について、教師による明示的な指導(explicit instruction)を行わず、学習者自らがこれまでに獲得した言語能力を駆使して学ぶ暗示的な学習(implicit learning)を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に海外学会1つ、および国内学会1つで成果発表を予定していたが、新型コロナウイルス問題により、それぞれの学会大会が中止または延期となってしまった。これにより、各大会2名分の旅費が必要なくなった。残額については次年度に開催される学会や研究会への出張旅費にあてる予定である。
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