研究課題/領域番号 |
18K00741
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
植村 隆 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (90786097)
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研究分担者 |
池田 真 上智大学, 文学部, 教授 (10317498)
青柳 成俊 長岡工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (70231785)
田中 真由美 武庫川女子大学, 文学部, 准教授 (50469582)
市村 勝己 長岡工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (60746387)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CLIL / 工学系大学院英語教育 / 工学英語 / 工学教育 / 高専 / STEM / ものづくり英語 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、先行研究にてモデル化したエンジニア特有のものづくり英語コミュニケーション能力の中で定義したエンジニアに求められる伝達力4レベルからなるものづくり英語表現力(①単純な伝達②具体的な伝達③論理的な伝達④的確な伝達)と最新教授法の内容言語統合型学習(CLIL)を活用し、工学系大学院生対象のものづくり英語教育教材開発・効果検証を通じ論理的で的確な伝達力を育成する工学系英語教育手法確立を目指すことにある。
2018年度は、上記ものづくり英語表現力を育成する教材用素材として、どのような場面でのどのような対話が不可欠なコミュニケーションなのかインタビューを通じてエンジニアと協働で対話素材を開発した。この協働開発という点が実学的であり、習得すべき焦点を絞った有効なコミュニケーション教育素材を整備することができるに至った点で従来の教材にはない付加価値を工学系大学院生に提供できる準備が整ったことは非常に意義が深い。具体的には「①単純な伝達」「②具体的な伝達」に関しては日系企業海外現地法人でのエンジニアによる従業員への指示場面の映像収録を行い、「③論理的な伝達」「④的確な伝達」に関してはエンジニアへのインタビューによる知見から③は主に製造・品質保証・設計・調達・生産技術の5部門相互間で交わされる企業内コミュニケーション(例:クライアント企業からの品質に関するクレームに企業内関連部門がどう連携対処し、問題解決を行うか論理的に協議しなければならない場面)が習得する英語コミュニケーションとして焦点を当てるべきと結論付けられた。また④は、技術営業エンジニアによる新製品紹介やクライアント企業の製造部門マネージャーへの品質問題解決対応といった対外的状況で、いかに的確な英語コミュニケーションが図れるかを自覚する重要性が結論付けられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究全体を通して核となる要素は、エンジニアとのインタビューを通じた知見と質の高い収集データそのものに他ならない。両者は研究計画調書にも謳っている通り、これまでにない「ものづくり」英語教育をCLILで実践するための教材開発に不可欠なものであり、かつ言語的特徴を把握・分析するための研究にとっても非常に重要な位置づけである。この点を踏まえた2018年度の最優先課題は、企業エンジニアへのインタビューを通じた英語による対話素材(ダイアログ)の開発と日系企業海外現地法人工場内における英語による指示を出している場面を映像収録することであった。当初計画通り、国内外でのインタビュー、映像収録およびダイアログ教材の作成を無事完了した。また、関連分野の教材研究を完了し、開発教材設計の方向性を既存の出版教材よりも、更に帰納的な習得を学習者が出来るよう設計することがCLILを活用した教育には不可欠である点が2018年度の教材研究を通じて定まった。
上述の当初計画以上に本研究が進展している理由として、以下が挙げられる。国際学会発表は最終年度に実施する計画であったが、本研究の取組内容の斬新さを認知した学際的分野の研究を促進する国際学会(15th International Regional (Asia) ISBS Neuroscience and Biological Psychiatry “Stress and Behavior” Conference)より招待シンポジウム開催のオファーを受け、招待発表者として本研究チームによる共同発表を行うことができた。更に、パイロット授業の段階から早期に使用する映像教材(開発ダイアログに則ったエンジニア同士のロールプレイ)の収録案が新規に出され、ものづくり現場を再現できるような機関を訪問し、役者を立てたロールプレイ映像教材の制作を追加で行った。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、2018年度エンジニアと協働で開発したダイアログ、ロールプレイ収録映像、インタビューデータ等を基にパイロット授業の実施と当該授業用教材作成を行う。5名の本学際的共同研究チームによる質的・数的メリットを活かし、教育効果検証用ツール(受講生用事前・事後アンケート、自己評価用ルーブリック、フォーカスグループインタビューにおける錬成された質問項目、パイロット授業事前・事後スピーキングテスト)の分担作成を同時にすることで研究推進効率化と学際的知見の開発教材への反映を試みる。パイロット授業用教材に関しては更に、収集データから言語的特徴の洗い出し・分析を行い、その結果を教材内容に反映させることでパイロット授業を通じたものづくり現場で使用される英語特有表現の習得を検証する。また、予習用教材と授業内実践用教材及び予習内容確認と定着を図るための小テストを作成する予定である。パイロット授業期間の授業は映像収録し「学びの瞬間」を特定すると共に、事前・事後スピーキングテストは音声収録し、正確性・流暢性・複雑性の観点から学習者の言語的特徴の分析と検証を行う。こうしてパイロット授業を総合検証した結果、改善点を研究チームで協議し、2020年度の本格授業実施用教材の作成と教育効果検証用ツールの改善までを行う予定である。2019年の実践報告を日本CLIL教育学会にて発表することが確定している。
2020年度は、本格授業の実施と本格授業用に2019年度に作成する教材を用いながら、教育効果の検証を行う。検証内容は上記授業時と同様であるが、コース全体に渡った教育効果の検証という点が異なる。本授業終了後、学習者の言語データ分析・検証結果を研究発表の対象とし、かつ2021年度計画にもあるように出版に向けた教材原稿作成を行う予定である。
最終年度の2021年度は、成果物となる教材の出版と国際学会での学会発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由として、当該年度に予定していた収録データの書き起こし外注費用が不要になった点が挙げられる。エンジニアと研究分担者がインタビューを通じて意見交換をしながら協働でダイアログ作成を行うスタイルに軌道修正し、研究チーム内の自助努力により対話素材完成を実現できる状況となったため外注費用は発生しなかった。また、海外エンジニアインタビュー収録渡航先を当初ヨーロッパ方面としていたが、計画をアジア地域に変更したため、旅費が計画よりも低水準に落ち着くに至った経緯がある。
翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画については、研究分担者との打合せのための国内旅費が主体となる。大阪・山口・東京を主会場としながら5名の研究者がそれぞれ1泊2日の日程で約年2回の打ち合わせ機会を予定して計上を行っている(81万円)。物品費・消耗品費については、パイロット授業内で収集する学習者言語データの分析が2019年度始まるため、データ分析用書籍と教材作成のためのプリンター関連消耗品を計上している(4万円)。人件費・謝金については、教材作成用の英文校正やエンジニアの対話視聴覚教材用ロールプレイへの映像出演のための謝金(10万円)が必要となる予定である。
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