本研究の当初の目的は保健医療系の(1)英語多読用図書・教材の開拓と選定を継続しながら、(2)保健医療系学生向けの英語多読用図書の語彙分析を行い、最終的に(3)多読による専門英語プログラムの実施と検証を行うものであった。授業内外での英語多読の支援として学生のスマートフォン活用を開始していたこと加え、コロナ禍により2年間全面的に遠隔授業になり、よりオンライン教材の活用が進むこととなった。また計画を調整し、人体の構造・健康・病気に関する英語図書と付属音声・映像教材に絞ること、英語プログラムを実施することまでを研究範囲とした。 (1)に関して、ノンフィクションの英語図書は英語圏の児童向けの比較的に容易に読める初期のレベルは増加しており、大学生英語の授業には取り入れ易いものであった。さらにレベルを上げると英語母語話者の高校レベルの高い難度となる傾向があり、実際の授業での利用は困難であった。(2)に関して、授業での導入も並行して行い、結果からも学生の反応からも、保健医療系の英語多読用図書に対する困難は(a) 専門的語彙、(b) 保健医療トピックに関する基礎知識、(c) 英文の長さが主要因であることが示された。(a)(b)については複数回の通読、また関連分野の図書を続けて読む工夫が効果的であった。読みのスムーズさが失われる傾向があり(c)を克服するためにも、一度読めば内容が理解できる物語・フィクション系の図書を保健医療系の英語図書と同時に読むことが、困難さをなるべく感じずに英語多読を続けることに役立った。これはオンラインライブラリーを利用した完全な遠隔授業の調査(2021年学会発表)でも示唆されたことであった。成果の発表は翌年以降に残している。
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