研究課題/領域番号 |
18K00748
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
吉井 誠 熊本県立大学, 文学部, 教授 (70240231)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 潜在意味解析 / 第二言語習得 / 語彙習得 / 多読多聴 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、多量のインプットを受けることによりどのように言語習得に結びついていくのか、語彙習得を中心にシミュレーションを行い、実際の学習者のデータと比較し予測の妥当性を検証する。学習者のデータとして日本人大学生を対象に多読多聴活動を実施し、語彙学習の実態調査を行う。シミュレーションとしては、インプット教材のテキストを潜在意味分析という言語解析手法を用いて分析し語彙習得の予測をたてる。1年目は準備期間であり、実験のための教材、多読用教材(Graded Books)の選定を行い、Cambridge English Readers (CER) シリーズのLevel 1&2を使用することにした。1年目の後半では、多読多聴の授業においてCERのLevel 1を課題として与えた。プリテストとしてVocabulary Level Testを使用し10月に実施した。また、Level 2を潜在意味解析モデルを用いて分析するための準備として、これまでにコーパス化したものを更に、1文を1ファイルとして保存し直す作業、文を整える作業を実施した。同時に、過去に収集したデータのうち、Vocabulary Size Testを使用したものについて、どのように分析を進めていくべきか統計の専門家、その他の語彙習得の研究者から助言を得た。この助言に基づき、VSTを用いて実施されたNative Speakerのデータ(Coxhead, Nation, & Sim, 2015) を潜在意味解析を用いてシミュレーションを行いLSAの妥当性を継続して検証していく方向性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の準備はおおむね順調に進んだ。多読用の教材を選定し、実際に大学1年生を対象にパイロットスタディを実施することができプリテストとしてデータを収集することもできた。また、LSA分析による語彙力の変化の測定も含め、多読を多角的に観察する試みとして行ってきた研究者による事例研究を九州英語教育学会にて口頭発表を行った。その内容はまとめて論文として発表する予定である。 まだ不足している点としては以下のことがあげられる。 CER Level 2のコーパス化は終了したが、そのテクストファイルを個別の文章として再構築する作業があり、研究補助員を2名雇用し作業にあたったが終了までには至らなかった。そしてLevel 1のコーパス化とコーパスの整理も急務となる。
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今後の研究の推進方策 |
まずはCER Level 2のテクストファイルを個別の文章として再構築する作業を終了させる。そしてLevel 1のコーパス化とコーパスの整理を実施する。 2年目にはLevel 1を読んだ学習者にさらにLevel 2の読書を実施し、2019年度の7月末には語彙力の変化を測るVocabulary Levels Testをポストテストとして行う。これにより2018年から2019年にかけて実施したCERのLevel 1 &2の読書を通してVocabulary Levelにどのような変化があり、その変化と潜在意味分析(LSA:Latent Semantic Analysis)に基づく予測とを比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)設備備品としてデータを管理するため管理用のノートパソコンを1台購入したが、ポータブルHDD、データの統計処理、分析を行うための分析ソフトについてはLSA分析のためにどのソフトが最適であるのかを専門家の意見を聞きながら選定中であるが、2018年度には間に合わず保留となった。消耗品として多読本はCER Level 1 & 2を整備したが、電子版の書籍の購入について用途に適したものを選定中であるが決定に至らず次年度に持ち越された。 (計画)設備備品としてデータを安全に保存するためのポータブルHDD、LSA分析に適する統計処理・分析が可能な分析ソフトを購入する。多読本としてCER以外の本や電子版の書籍の購入を行う。
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