研究課題/領域番号 |
18K00750
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
河合 裕美 神田外語大学, 児童英語教育研究センター, 講師 (10716434)
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研究分担者 |
高山 芳樹 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10328932)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 英語音声指導法 / 視覚的教材 / 通常学級 / 聴覚障害児童 / 分節音の知覚・産出能力 / 音環境 / 視覚的ストラテジー / 口形模倣 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,2020年からの小学校外国語教科化から有用できる日本語を介さない英語音声指導法と視覚的補助教材を構築・開発し,健聴児童と聴覚障害児童が共存する小学校通常学級が増加していることを考慮して,全ての児童が等しく英語音声指導を受けられるユニバーサルな教育体制を確立することである。 当該年度においては,具体的な研究計画のうち, (1)児童の英語音声の分節音について,健聴児童と聴覚障害児童の知覚と産出の困難度を特定する,(2)通常教室や聴覚障害学級(聞こえ教室)の外国語授業の音環境の実態を明らかにする,(3) 聴覚障害児童の指導に関わる通常学級や聞こえ学級担任・支援教員・ALT教員(外国語指導助手)らにインタビューを行い,小学校英語や合理的配慮に対する意識について明らかにした。さらに、(4)研究代表者は,研究対象校の小学校教員(聞こえ学級担任)やALT教員に研修を行い,教員らは聴覚障害児童に視覚的ストラテジーや口形模倣を意識させる日本語を介さない音素認識を含む英語音声指導を実践した。その結果,教員の英語指導に対する態度や意識がポジティブに変容し,指導を受けた聴覚障害児童の英語分節音知覚・産出能力が向上した。 研究対象校にて(1)~(4)の研究課題に取り組むと同時に,視覚的教材(絵カードと動画)の構築を開始した。動画教材については,当該年度中に研究代表者所属大学において,英語母語話者教員と日本語母語学生に出演を依頼し,研究代表者と研究分担者が2名に研修を行った上で撮影を行い,動画のパイロット版を作成した。研究分担者は,セミナーにおいてそのパイロット版を紹介し,興味を持った自治体とのコンタクトを開始した。 上記の研究課題が明らかになったことで,通常学級と聴覚障害特別支援学級のための英語指導法の具体的構築を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のうち,初年度中に聴覚障害児童の英語分節音の知覚・産出能力,通常小学校の英語授業中の音環境,小学校教員の小学校英語や通常小学校に在籍する聴覚障害児童への合理的配慮に対する意識が明らかとなり,さらに,教員自身が口形模倣や視覚を意識させる音声指導を実践することによって聴覚障害児童の知覚・産出能力が向上した結果を得られた。聴覚障害児童への音声指導を録画し視線分析を行った結果,初習学習レベルの児童が英語音声を学ぶ上で視覚的ストラテジーが有効であることが明らかとなり,研究初年度に視覚教材を構築する根拠が得られたことは,本研究を推進していく上で大変意義深いと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究2年目については,動画教材の完成を目指し,その動画を使って研究対象校にて検証を開始する。当該年度において多くの研究課題が明らかになった一方で,通常担任教員と特別支援担任や支援員の小学校英語や合理的配慮の意識に差があることが明らかとなり,聴覚障害児童が在籍する通常学級と特別支援学級の英語指導の連携体制の構築があらたな課題であると位置づけ,その連携体制の中で,構築した音声指導法や視覚的教材の効果を検証する必要がある。視覚的教材が教員の指導を介助でき,児童の英語音声知覚・産出能力向上の一助になり得るのか,教員の英語指導に対する意識や児童の英語音声に対する意識の変化を調査し,児童の視覚ストラテジーの有効性について,視線分析を行う。また,音声指導の結果,児童の英語能力が向上しているかどうか,テストを実施して検証する。 当該年度に実施した研究調査の成果については,学会や論文,セミナー等で発表し,通常学級に在籍する聴覚障害児童の実態について周知活動を行う。研修やセミナー等で英語音声指導法・教材を紹介し,普及を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、当初機械備品として児童(特に聴覚障害児童)の言語産出を音響分析できる専門機器(ソナスピーチ)を購入する予定で、約150万円程度の支出を見込んでいたが、当該年度中に購入する必要性が低いと判断し、購入を見送ったため、本研究初年度の予算と実支出額と差が生じたものである。本研究2年目においては、動画教材の構築の完成を目指すため、編集等に謝金の支出が予想されることと、児童が英語音声を知覚していく上で視覚的ストラテジーが指導において重要な鍵になることから視線分析をする計画で視線分析ソフトウェア購入に持ち越し予算額を充当する予定である。
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