研究課題/領域番号 |
18K00752
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小柳 かおる 上智大学, 言語教育研究センター, 教授 (90306978)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 個人差 / 日本語熟達度 / 言語適性 / 動機づけ / フランス人学習者 |
研究実績の概要 |
当該申請者のフランスにおける在外研究を利用して、フランス人日本語学習者を対象に行った調査により、個人差(言語適性、動機づけ、ビリーフ、学習ストラテジー)のデータが集まっている。前年度に言語適性と動機づけ、日本語熟達度(J-CATの聴解・読解)との関係について予備的な分析をし、本年度に口頭発表を目ざしていたが、国際学会が中止になったため、口頭発表をせずに論文投稿を進める方向で準備している。 また、日本語熟達度のデータとして発話資料の分析を進めた。発話のデータは文字起こしをして、ASユニットという分析単位に区切り、その上で複雑さ、正確さ。流暢さの指標を用いた発話の評価が必要である。これらのASユニットやCAFの指標は英語の研究ではよく用いられるが、日本語に適用する際の妥当性、信頼性を高めるための検討を行った。調査補助者二人に作業を依頼し、CAFに用いた指標については高い評者間信頼性の数値を得ることができることが確認された。作業は思ったより時間がかかり、データ量も多かったため、未分析のデータがまだ残っている。これらの分析のプロセスから、今後このような研究をする際のマニュアルになるような論文を執筆中である。 さらに、動機づけに絞り、「動機づけのL2自己システム」という理論の枠組みを用いて、動機づけの質問紙の分析を行った。動機づけは常に変化するダイナミックなものとされるが、質問紙のカテゴリー毎の数値に学年による違いが見られなかったため、1~3学年のデータを一緒にし、日本語熟達度のテスト(J-CAT)は各学年の偏差値を出して、統計にかけた。その結果、動機づけは日本語熟達度の説明変数とはならなかったが、日本語の熟達度を身につけた将来の自分をイメージしているという「理想的自己」と肯定的な「L2学習の経験」が学習努力の意思を説明できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
口頭発表を目ざしていた国際学会が、軒並み中止や延期になり、発表の機会をあきらめざるを得なかった。また、そのための支出として予算を組んでいたため、予算執行が難しかった。また、コロナ感染拡大により所属機関がオンライン授業となり、その対応に追われたため、例年より研究の時間が取れなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の一年延長が認められたので、最終年度は残るデータの分析を行う。通常は口頭発表をしたものをさらに論文に仕上げていくが、国際学会が中止や延期となる中、今回は口頭発表を経ずに、論文投稿を目ざしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2回の国際学会参加を見込んで予算を申請していたため、当初の2020年度まででは支出することができなかった。次年度は研究補助者への謝金や、論文執筆のための参考資料の書籍の購入などに充てる予定である。
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