研究課題/領域番号 |
18K00755
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
加藤 和美 東海大学, 清水教養教育センター, 講師 (60631801)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中間言語語用論 / 第二言語習得 / 語用論 / グループ活動 / 異文化間コミュニケーション / ICT / iPad教材 / コミュニケーション能力 |
研究実績の概要 |
高等学校新学習要領の改訂に伴い、外国語科では、「授業は英語で行うことを基本とする」こととなった。本申請者は、2012年よりグループ活動を英語で行うための中間言語語用論研究を行ってきた。実際にイギリスの大学を訪れ、現地の学生のグループ活動の様子をビデオで撮影し、そのビデオデータを利用してグループ活動のためのモデルiPad教材を作成した。さらに、中間言語語用論研究をもとに、語用論的能力と言語習得を促進させるための指導図を作成し、5回で完結するグループ活動のための指導方法を開発した。そして、その教材と指導方法を大学と高校にて実践した。これまでの研究では、Bachman & Palmer (1996) のコミュニケーション能力の構成要素(1)言語能力、(2)方略的能力、(3)精神生理学的作用のうち、(1)言語能力の「知識」を得るための教材と教授法の研究をしてきたが、本研究では、言語能力とは独立した構成要素の(2)方略的能力に注目し、「知識」習得だけではなく、実際にグループ活動を円滑に遂行する「能力」を研究する。本研究ではICTを利用して実際に海外の学生と共同でグループ活動を行い、その様子をビデオ録画により観察する。つまり、学習者はアクティブラーニングを通して言語能力の「知識」を教室内にて学習した後、今度は実際に海外の学生とインターネットをつないで異文化間で共同グループ活動を行う授業展開を試みる。言語能力だけでなく、方略的能力を検証することによりグローバルな人材育成のための授業を構築する。1年目は、シンガポールの学生とネットを利用した合同授業ができるように、環境を整える。2年目はシンガポールの学生によるグループ活動の分析教材を作成する。3年目は方略的能力の習得、遂行の観察・確認の方法を研究し、分析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目の2018年度は、実際にインターネットを利用して海外の学生と共同作業ができるようネット環境を整え、事前に確認作業を行った。シンガポールの大学の教員と打ち合わせを行い、ネットを繋げる時間帯を決めて、半期に2回インターネットを通じて合同授業を行った。 シンガポールの学生と合同授業をするための事前準備として、まず、日本人同士で英語によるグループ活動を行った。平成27年度~平成29年度の若手研究(B)の研究で作成したグループ活動のタスクと指導方で日本人同士4名1組のグループを4組作り、グループ活動を行った。「言いたくても言えなかった英語表現」を習得する際には、スマートフォンのアプリを利用してインプット活動を行い、学習後は習得確認テストを行った。100点満点中60点以上獲得するまで何度も試験を行い、表現をインプットしていった。 日本人同士でグループ活動を練習した後、インターネット上で日本人学生2名とシンガポールの学生2名、合計4名1組の異文化混合グループを8組作った。大学のパソコンにはネット通信アプリのスカイプをダウンロードすることができないため、8つのiPad (A~H)にそれぞれスカイプをダウンロードした。1回目のネット合同授業では、スカイプを利用して各グループでそれぞれメンバーと音声の調整やネット環境の確認をしながら英語で自己紹介を行った。そして、2回目の合同授業では、スカイプを通じてシンガポールの学生、日本人の学生それぞれが作成してきた4コマストーリーを見せ合い、話し合い、共同で新たな作品を1つ創作するグループ活動を実践した。機材によっては音声の不具合のためデータが取れなかったグループや、録画を忘れたグループがいくつかあった。iPadやイヤフォン等の購入をすること、学生への録画の方法を確実に伝える必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
実際にシンガポールの学校と日本の大学とでインターネットを繋げて合同授業を試した結果、2か国間での授業時間の調整が可能であること、マイクとイヤフォンの性能を上げれば教室内で共同グループ活動をすることが可能であると確認できた。また、グループ活動のためのハンドアウトをわかりやすくまとめてシンガポールの先生にメール添付で送って内容を確認するなど、事前準備の重要性を感じた。今後の計画としては、学習者がシンガポールの英語に慣れるため、シンガポールの学生同士がグループ活動を行う様子をビデオで録画し、そのビデオデータを利用してiPad教材を作成する予定である。しかし、その教材を利用しても日本人がシンガポールの学生の英語に慣れるまでに相当な時間を費やすと考えられる。そのため、教室内だけでなく、教室外でも多く学習の機会を与える工夫が必要である。また、今回の事前確認では、筆記テストで良い点数を取った学生がグループ活動を行う際により多くの習得表現を利用していたわけではないこともわかった。もともと英語が話せる学生よりも、英語レベルが低い学生のほうが学んだ英語表現を最大限利用しようとする意欲が見られる傾向にあった。このことから、テストの結果だけでなくビデオ録画の観察、アンケートやインタビューによる検証により学習者個々の方略的能力を調査し、能力に合った指導方法を作成する予定である。
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