研究課題/領域番号 |
18K00766
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
吉澤 清美 関西大学, 外国語学部, 教授 (80210665)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多読 / 文法・統語能力の発達 / 中間言語 / 読みの速度の発達 / リーディングとライテイングの接点 / 外国語での読み |
研究実績の概要 |
多読により学習者は大量の読み物を読みながら、読みのプロセスの下位処理の自動化を発達させると考えられる。このため読みの流暢さ、特に読む速度が増すと考えられる。この時に処理速度が速くなるだけではなく、学習者の中間言語に質的な変化が生じ、中間言語の構造に変化が起きているのではないかと言える。本研究では、多読により読みの下位処理の自動化が起こり、読みの速度のみならず、学習者の中間言語、特に、文法・統語知識に影響を及ぼすのかどうかを検証する。更に、リーディングとライティングはともに文字情報が関与し、両者は深く関わりがあると言われる(Hirvela, 2016)。多読を継続的に行うことにより、学習者のライテイング力はどのような時系列的変化をみせるのかを検証する。研究協力者として、髙瀬敦子氏、大槻きょう子氏に研究に加わっていただいた。 上記目的に対して、2021年度は英語でのリーデイング教材を使いながら、授業内外で一年間多読を行った学習者(多読グループ)と多読を行わず、ストラテジー訓練や精読を行った学習者(統制グループ)が約300語の英語で書かれた伝記文を読み、その内容を英語で要約した要約文の分析を更に進めた。要約文の分析に関して、第2言語学習者のライテイング能力発達研究の専門家であるトロント大学Alister Cumming教授からの専門的な助言を基にテキストの中のpropositionsとcoherence(一貫性)を評価単位とすることとした。分析結果から、統制グループ、多読グループとも要約文を書く力に発達が見られたが、後者の要約文の方が全般的により詳細、かつ一貫性のあるものであった。このことから、多読を部分的にでも活用することが書く力の発達に寄与すると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
伝記文要約の中で学習者が産出した中間言語の構造として、動詞の項を中心に多読グループと統制グループ間での時系列的な変化と文法・統語知識の時系列的変化を分析する予定であったが、コロナウィルス感染拡大に伴い、研究代表者、研究協力者ともオンライン授業の準備、学内業務多忙のため、データ分析に遅れが生じた。更に、同様の理由により、2018年、2019年収集の下記のデータ分析にも遅れが生じた。(1)一年間多読を行った英語学習者(多読グループ)とストラテジー訓練や精読を行った学習者(統制グループ)が受けたEdinburgh Project on Extensive Reading (EPER)のプレイスメント・プログレステスト、(2)EPERリーデイングテスト、(3)読む速度テスト。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は以下のデータ分析を行う。(1)伝記文要約の中で学習者が産出した中間言語の構造として、動詞の項を中心に多読グループと統制グループ間での時系列的な変化を検証する。(2)多読により読みの下位処理の自動化が起こり、読みの速度が伸びるとともに、学習者の中間言語、特に、文法・統語知識にどのような影響を及ぼすのかどうかについて分析を進める。(3)EPER リーディングテスト、読む速度テストを分析し、多読グループと統制グループの読解力、読む速度の時系列的変化を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年8月に開催されたExtensive Reading Around the World、9月にイギリスNorthumbria Universityで開催が予定されていたイギリス応用言語学学会2021年大会がいずれもオンライン開催となり、研究発表のための国外旅費が未使用となった。更に、研究協力者である高瀬敦子氏、大槻きょう子氏との科研会議もオンラインで開催しており、国内旅費が未使用となった。また、データ分析の遅れのため、論文執筆、校正に遅れが生じた。 2022年度は下記に支出予定である。(1)2023年3月米国オレゴン州ポートランド市開催のアメリカ応用言語学会での研究発表・参加(440,820円X2名)、(2)専門誌への論文投稿のための英文校正(17円X8,000単語X3篇)、(3)専門知識の提供の謝金(学外者90分、30,000円X2回)、(4)データ入力業者依頼のための人件費(50,000円)、(5)図書(2,900円X3)、(6)消耗品(10,000円)。
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