研究課題/領域番号 |
18K00769
|
研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
山川 健一 安田女子大学, 文学部, 准教授 (00279077)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 留学 / 留学の効果 / 留学プログラム / 留学事前事後 / 外国語教育 |
研究実績の概要 |
2018年度は、次年度の本調査を見据えたパイロット調査ならびに各種準備を行う年度であった。2018年度に留学していた学年のグループに対して、ウェッブ上でのポートフォリオによるパイロットとしてのデータ収集を開始した。 また、留学中の調査対象者の内面的変容を分析する一つの大きな観点として、調査対象者の現地におけるアイデンティティの変化ならびに社会的サポートの有無について焦点を当てることとし、今年度はこの領域の先行研究を詳細に検討した。 また、調査対象者の異文化間能力を定する指標として、当初はIDI (Intercultural Development Inventory) を予定していたが、測定指標のインパクトとしては弱いと判断し、新たにBEVI (Beliefs, Events, and Values Inventory) を用いるように変更した。そしてそのためのBEVIのセミナーに参加し、BEVIの事業実施関係者と連絡を取り合う体制を構築した。 これまでに収集してきた各種データの一部については、2つの学会で口頭発表を行った。一つは、シンガポール国立大学で開催されたCLaSIC 2018において、Study Abroad Experiences as Narratives:A Preliminary Investigation Using the Trajectory Equifinality Approachという発表であり、ここでは12名の留学者のインタビューデータを基に、現地でどのような学びや変容のプロセスをたどってきたかについて、TEA(複線経路等至性アプローチ)の手法を用いて分析を行った。もう一つは、京都大学で開催された第25回大学教育研究フォーラムで「留学の効果と留学プログラムの評価の動向」という発表であり、主に留学の評価に関する先行研究をまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
報告者は、2016年度より文部科学省から勤務大学が採択された事業の主担当となり、2019年度で4年間の最終年度を迎える。そのための計画、立案、実施、評価の仕事が年度を通してこれまでずっとあった。そのピークが2018年度と2019年度になる。また特に、2018年8月には、この事業の一環で急きょアメリカに視察ならびに提携先大学と協議するために1週間渡米した。この渡航の前後の準備にも時間を要し、本研究課題の実行にも少なからず影響を与えた。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は本研究課題の2年目であり、また本調査を行う年度である。調査対象者に対する事前の準備も進んでいる。本調査の調査対象者からは既に調査の実施に関する許諾を文書で得ている。また、収集する各種データ収集(TOEIC, TOEIC Speaking、心理調査、異文化間能力を測定する調査)などの実施準備もすでに行っている。調査対象者が8月から9月にかけて留学に出発するまでに、これらのデータを収集する予定である。また、帰国後の2月~3月にかけても同様のデータ収集を行う予定である。 留学中は調査対象者から、ウェッブ上のポートフォリオシステムを用いて、留学時の様子や生活を記録してもらう予定である。さらに詳細なデータ収集を行うため、報告者は留学の中途時点で北米に渡航して、一部の調査対象者と面会しインタビュー等のデータを直接収集する予定にしている。ただし、現地の学生の予定や、報告者の勤務大学の授業やその他の業務との調整次第では、これが困難になる可能性があるので、その場合は、ライン等の連絡手段を用いて、ライン電話上でインタビューを行う可能性を検討している。 また、調査対象者が帰国した際は、2月から3月にかけての春季休業期間を用いて、半構造化インタビューを行い、留学中に記録したポートフォリオのデータを用いて留学を振り返ってもらう予定である。 また、留学後の各種アンケートによって、調査対象者が留学プログラムに対してどのような感想を持ったのかについても、直接的にデータを収集し、留学プログラムの評価を行う際の基礎データにする予定である。 2019年度はこれに加え、これまで収集した各種データを統合したり比較したりして、これまでの研究の中間まとめを、学会発表ならびに論文執筆を通して行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初は本研究費で2018年度にノートパソコンを購入する予定であったが、勤務大学の個人研究費で購入するように予定が変更した。加えて、データの収集に関しては、予備調査における英語能力試験や異文化間応力測定調査等を行うことができなかったことが挙げられる。よって、文字起こし以外のデータ入力等の人件費が未使用となった。 2019年度は本調査の年度であるので、TOEIC SpeakingやBEVIの実施、ならびにインタビューデータの文字起こしや、調査対象者の留学先である北米への現地調査旅費等が予定されている。加えて、2019年度末段階での中途経過報告として、学会発表を2件(国際学会1件と国内学会1件)予定している。 また、発表したものを論文化する際の投稿料・英文校閲料やその他諸費を予定している。
|