研究課題/領域番号 |
18K00776
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
鈴木 渉 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (60549640)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 第二言語習得 / 脳イメージング / 学習者の個人特性 / 社会性 / 動機付け / 学びに向かう力 / 人間性 |
研究実績の概要 |
本研究は、新学習指導要領の重要なコンセプトである「学びに向かう力」と「人間性」を、それぞれ「動機付け」と「社会性」として操作的に定義し、fMRIを用いて、外国語学習がこれらの能力を育成することを検証することを目的とする。今年度は文献研究や情報収集を中心に行った。具体的には、まず、定期的に、分担者らと、言語学、心理学、教育学、脳科学等における研究課題の位置づけを確認しあってきた。また、国際学会(Society for Neurobiology of Language 2018)に参加し、研究課題内容に関する近年の動向や最新の研究成果について、情報収集・情報交換を行った。1年目の研究成果をまとめると、以下のようになる。 これまでの言語学(特に外国語教育研究)では、学びに向かう力や人間性の観点として、動機付け、メタ認知、性格などを中心に検討されてきた。例えば、英語を学習する動機が高いこと、自分の認知について客観的に把握し行動を調整できること、外向的な性格であることなどが、外国語学習の成否を予測する要因として提唱されている。脳科学においても、学習者の不安(情意要因)が高いと、外国語コミュニケーション中に社会的行動の自己モニタリングに関与する脳領域が活性化しないことが分かっている。また、外国語コミュニケーション活動やコミュニケーション場面からの言語学習が社会への適切な順応や健全な人間関係構築に関与する社会認知領域を活性化することも分かっている。さらに、やる気(動機)に関与する報酬系システムが言語学習の際にも高く反応することが報告され、社会認知領域、報酬系システムなど言語処理領域以外の神経基盤が外国語学習に関与している可能性が示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度には、fMRI実証実験を行う前に文献調査研究、最新の状況収集を行うために様々な学術活動を行なった。まず、神経言語学における最大の国際学会Society for Neurobiology of language 2018に参加し、情報収集及び関連研究者と情報交換を行なった。第二に、脳イメージング研究の新しい実験方法のヒントを得るために、University College LondonのAntonia Hamilton博士研究室に訪問し、fMRIやfNIRSを用いたコミュニケーション実験方法、分析を伝習してきた。さらに言語学(特に外国語教育研究)において、学習者の情意特性分析の第1人者であるJean-Marc Dewaele教授(University of London, Birkbeck)の研究室に訪問し、実験デザインなどを話し合い、海外研究協力者として助言を得ながら実験デザインを具体化させた。具体化させた実験デザインを基に倫理委員会書類作成、実験刺激作成、実験プログラム作成など実験の準備を徹底的に行なった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年以降は、文献調査研究と実験研究を中心に行う予定である。まず、昨年度同様に、分担者や研究協力者等と言語学、心理学、教育学、脳科学等の様々な分野における当該研究課題に関する最新の研究成果等を共有するため、学会に出席したり、Skypeミーティングを行ったりする。次に、他者とやり取りを通した外国語学習が動機や社会認知能力に関与しているかをfMRIで検証する予備実験・本実験の準備、実施、結果の分析を行う。実験の具体的な内容は、右利きの日本人大学生50名を対象に、まず、学習ターゲットの語彙を異なる学習条件(コミュニケーション条件とモノローグ条件)で学習させる。その後、ターゲットの単語再認課題中の脳活動をfMRIを用いて測定する。また、様々な個人特性や学習者の情意に関する行動アンケートデータも収集する。脳活動の分析には、社会への適切な順応や健全な人間関係構築に関与する社会認知領域(内側前頭前野・側頭頭頂接合部)と動機に関与する報酬系システム(腹側線条体)のそれぞれの活動の強さと領域間結合強度を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より、新規性の高い研究のため、情報収集や実験準備に時間がかかり、初年度には実験を実施しなかった。緻密に実験を準備するためであり、実験計画などに問題生じたことではない。初年度に実験を実施していないため、差額が生じたが、2019年に実施するfMRI実験で使用する計画である。
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