研究課題/領域番号 |
18K00778
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
佐藤 健 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40402242)
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研究分担者 |
橋本 健広 関東学院大学, 経済学部, 教授 (70566546)
岡田 毅 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (30185441)
小倉 雅明 大阪大谷大学, 教育学部, 講師 (40805785)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 協働学習 / ライティング / 自動翻訳 / 実践コミュニティ / 専有 / オンライン学習 / コンピューター支援外国語教育 / LINE |
研究実績の概要 |
今年度は、ICTを用いた協働学習について行った研究を国内・国際学会にて発表することに加え、研究成果を踏まえたワークショップを実施することで、多くの外国語教育関係者に対してICT利用協働学習の意義と課題を提示することができた。
1つはGoogleドキュメントを用いた協働ライティングを行う過程で、学習者の意識がどのように変化するか、また協働学習がうまくいったグループとそうでないグループの違いを量的、質的分析を混合して検証した。その結果、協働学習を通して自分の書いた文章が他の人に見られ、評価されることについての抵抗感が減ることが分かり、今後のICT利用協働ライティングにおける活動の可能性を示した。また協働学習に肯定的に取り組めたグループは,授業を通じて抵抗感が減少し,気づきや校正を通じて言語への意識が高まる傾向が見られた一方、取り組みに否定的であったグループは,ブレインストーミングまたは協働学習の作業の段階で学習が終了する傾向が見られた。この結果から、協働学習の意義に対する肯定的な説明を行った上で実践を開始する必要があり、他の人の文章を見ることを通して気づきを促し、校正させる必要があると主張した。この結果は次年度以降の実践研究に大きな示唆となった。
2つ目はオンライン協働学習環境を創出するために、LINEグループ内にて自動翻訳チャットボットを介した対話活動を実施し、その効果と参加者の態度の変化を検証した。自動翻訳ボットを使うことにより、グループ内で書かれた日本語が全て自動的に英語に即時翻訳されるため、内容を理解した英語にふれることができた。3週間後のライティング活動の結果、翻訳された英語表現を用いていることが確認された。さらに協働学習に対する肯定的な認識も促進されることとなった。この結果は協働学習の効果を検証するポイントを特定する上で大きな示唆を持つものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度であるにもかかわらず、すでに複数の研究を実施し、その成果を国内外の学会で発表し、論文を公刊することができた。これらの研究を通して、本研究を実施する以前に持っていたICT協働学習の意義が再確認できただけでなく、学習がうまくいくグループとそうでないグループの差がそれぞれの学習プロセスの観察を通して明らかになったため、次年度以降の研究に新しい知見を加え、より内容のある研究を次年度以降に実施できると考えている。更にそれらの研究成果を踏まえてICT協働学習についてのワークショップを実施し、ICT利用協働学習の意義と可能性を伝えることができた。発表した学会は国内外とも規模の大きい学会主催のものであったため、それぞれの発表に多くの参加者を集めることができ、研究内容をより多くの方に伝えることができた。すでに何人かの方から興味を持って頂いており、本研究の規模拡大のきっかけを作ることができた。また、研究発表を行ったところ以外の学会に参加することができた。様々な研究発表に触れ、最新の研究成果と我々の研究の今後の転換について知見を得ることができた。例えばアジアではコンピュータを備えた(CALL)教室の設置が難しいため、学生が自身のデバイスを用いて(BYOD)学習するための方策が必要であり、モバイル機器を用いた協働学習の方策と評価方法についてさらなる実践と研究を勧めていく必要があることを認識した。
このように、研究初年度であるにもかかわらず、共同研究者・研究協力者とともに複数の研究を行い、その成果を国内での発表、及び論文という形公表できたという点で本研究は順調に進んでいると判断してよいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、本研究は順調に進んでいると思われるが、今後のさらなる研究の発展に向けて留意しておく点がある。1つは最新研究のレビューである。本来初年度は、ICT利用協働外国語学習の文献レビューを行い、実践手法及び評価方法を把握することが主たる目的であった。しかしICT利用協働学習の新たな方策を探る研究が先に動き出してしまったため、文献研究がやや疎かになってしまったところがある。
そこで次年度はこれまで実施してきた研究をさらに進め、国内外での学会発表及び論文執筆を行っていくことと並行して、先行研究調査をより緻密に行っていく。このことを通して現在進行中の研究の位置付けが明確になり、発表や論文の下支えとなる理論的考察が強固なものになると予想される。このためには今年度に引き続き、国内外の学会に参加して最新研究を調査する必要があると同時に、共同研究者が一同に介してそれぞれ調査してきた先行研究を突き合わせて議論する場を設ける必予定である。
まとめるならば、研究計画の1年目と2年目に実施する計画が逆になってしまったところがあるものの、それらは最終年度のICT協働外国語学習の実践・評価の指標づくり 向かって行われているため、引き続き研究を進めていく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越が発生した理由は以下の通りである。初年度予定していた文献調査よりも研究発表が優先されたため、書籍購入がやや少なくなってしまったこと、またシステム開発が予定よりも遅れ、多くの費用が次年度に必要となったことが挙げられる。次年度は文献調査を重点的に行う予定であること、システム開発が今年度中に完成する予定であることから、繰越分の費用は次年度中にすべて利用される予定である。
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