本研究は、第二言語学習者を母語話者と比較して、様々な言語的特徴の影響をより大きく受けるのではないかという説を検証し、その要因についても調べた。研究当初は、英語母語話者と日本人英語学習者のみを対象としていたが、アルファベットを母語に持つ第二言語学者を対象に加えることでより精緻に仮説検証が可能となることが分かったため、ドイツ人第二言語学習者も実験に参加してもらった。また、最初は単語レベルの言語的特徴を取り上げることとしていたが、最終的に連語表現レベルまで研究を広げることができた。 研究全体で3実験を行い、次の研究課題を調査した。①日本人英語学習者は,英語母語話者より単語の頻度効果は大きいのか、②読解時の日本人英語学習者による視線の動きは、母語話者と比較して単語の頻度効果および語長効果が異なるのか、③日本人英語学習者、ドイツ人英語学習者および英語母語話者と比較した場合、連語表現の頻度効果はグループ間で異なるのかであった。さらに、言語接触量(本研究では語彙サイズを採用)はこの3課題の差異に影響を及ぼすのかを分析した。 その結果、第二言語学習者は、単語や連語表現の頻度や語長の差異の影響を母語話者より強く受けることが明らかになった。これは、母語の異なるドイツ人学習者と日本人英語学習者についても同じ傾向が見られた。さらに、母語話者と学習者の影響の差異は、語彙サイズだけで説明できないことが示唆された。 本年の実績としては、最終年度として、今までの実験をまとめ、国際誌(Bilingualism: language and cognition)に論文をのせることができた。
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