本研究の当初の目標は日本の高等教育における外国語(英語)教育の将来に向けて「ロードマップ」を提示することであった。 2018年-20年度に行った、主としてマスメディアにおいて英語教育がどう伝えられ、どう受け取られてそれが学習者の行動にどう影響するのかという点についての研究の結果から、新たな政策が提示されるごとにマスメディアが「賛成」「反対」の二者択一の論調を必ずしも文脈を与えずに報じ、学習者の多くが限らた情報をもとに自らの外国語(英語)学修について判断をしなければならないこと、また特に大学という教育現場では英語教育プログラムが商品化され(Oda 2019他)入学者確保のために「何を行うか」の議論よりも「社会(受験生)にどう見せるか」を優先にプログラムが開発せざるを得ない傾向があることが分かった。いわゆる「ネイティブ・スピーカー」そして彼らの使う英語が絶対であるという言説があからさまに表に出ることは少なくなったが、「ネイティブ・スピーカー」優位という言説はいまだに蔓延し学生確保の手段として使われいるため、教員もその枠組みで採用され続けている。最終年度は、この30年間に日本の応用言語学の変遷と、「ネイティブ・スピーカー主義」の英語教育プログラムの影響の変化の関係を中心に通時的アプローチ検証をした(Oda 2021)。この30年の間に応用言語学が英語教育における問題解決から、社会における言語・コミュニケーションに関わるあらゆる問題を複数の学問領域の力を借りて解決するものに移り変わって来ており、対象とする言語も多様化している。今後の国際コミュニケーションにおいて英語の役割は引き続き大きいが、あくまでも共通語の1つとして捉え、言語教育プログラムの設計・運営についてもより学際的なアプロ―チで臨むことが急務であろう (2022年度論文刊行予定)。
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