研究課題/領域番号 |
18K00795
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
尾関 直子 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (00259318)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スピーキング / ダイナミックシステムズアプローチ / 第二言語習得 |
研究実績の概要 |
本研究では,ダイナミックシステムズ理論(DST)を考慮に入れ,スピーキング発達に寄与する外的要因,内的要因を縦断的に調査することが目的である。 従来のスピーキングに関する研究では,1度に大量のデータを横断的に収集し,その分析結果を全体傾向として平均値等でまとめることが行われてきた(Dornyei, 2014)。しかし,複雑系の科学を背景として台頭してきた最新の発達理論であり,発達のプロセスを「ダイナミック」「非線形」「共適応」などのように捉えるDSTのアプローチに基づけば,平均値では表現しきれない多様性にこそ重要な情報が隠されていると考える。そこで本研究では,学習者の個人差の観点も考慮することにより,スピーキングパフォーマンスの変化・発達プロセスをより詳細に検討する。 2018年度には,調査協力者10人が使う24回分のスピーキングタスク,ジャーナル,質問紙調査に使うタスクを準備した。調査協力者は,24回にわたって,スピーキングタスクを,授業外で行う。スピーキングタスクは,2コマから6コマの漫画を見て,英語で物語を作るという課題である。また,課題を行った後,必ず,ジャーナルを作成する。ジャーナルの各エントリーには,与えられたタスクが終了するごとに自分のスピーキングを振り返り,文法や語彙,内容の修正点を参加者みずからが考える自己評価欄を設ける。本研究はスピーチプロダクション研究にDSTをはじめて本格的に適用しようとする試みであり,その適用可能性が実証されることはスピーキングに関する研究のみならず,応用言語学・第二言語習得研究の学術的進展にとって大きな意味を持つものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度には,調査協力者10人が使う24回分のスピーキングタスク,ジャーナル,質問紙調査に使うタスクを準備した。また、その調査も一部行う予定であったが、この調査にふさわしいスピーキングタスクを探すのに、非常に時間と労力がかかったためである。今年度は、準備がすべて整ったため、調査を開始できる。
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今後の研究の推進方策 |
スピーキングの実際の調査を行う。24回のタスクのスピーチはすべてICレコーダーに録音する。また,この実験の前後には,申請者が作成した質問紙尺度による調査をし,スピーキングに影響を与える内的要因を分析する。 2019年度には,ICレコーダーに録音した24回分のスピーキングタスクを大学院生に協力してもらい,文字化する。従来のスピーキングタスクの研究では,正確さ,流暢さ,複雑さという量的な面からの分析しかされていないが,本研究では,量的な分析に加えて,スピーキングデータを物語評価(夏堀, 2002)し,質的にもスピーチパフォーマンスの変化を見る。また,スピーキングタスクを繰り返し行うと,同じようなタスクを行うときによい影響を与えることも確認したい(Kim & Tracy-Ventura, 2013)。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りの支出であったが、1万円程度余った。
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