研究実績の概要 |
本研究は、英語の苦手な学生が自ら考え、英文を組み立て、海外に発信するというアプローチで、「英文発信力向上プログラム」の開発と効果検証を通じ、「英文発信力」(すなわち「英語を書く力」と「発信する自信」)を向上させる要因を明らかにすることを目的としている。2年目(当該年度)の実施計画は、1年の量的・質的分析で特定された効果要因を検証することである。 当該年度は、1年目の実績を踏まえ、学生のライティングテストで得られた英文をより詳細に分析し、そこで明らかになった問題点を明らかにし、それを克服する指導プログラムを作成した。短期大学全1年生226名が全学必修英語教育科目(Integrated English)において書いたエッセイの中でfluencyが伸びた学生を対象として, 1)英文の構成, 2)accuracy, 3)contentsの深化の3観点からライティング力の変化を調査し、アンケートにより学生自身が感じた変化の要因を検証した。 本英語教育科目では, 国際教育ネットワークへの英文投稿を最終目標として, 論理的思考や日本語と英語の構造の違いを学ぶ「英語発想」の指導など, 多角的にライティング力の質を高める指導を行った。具体的には、エッセイの内容をプレライティング、ブレインストーミングする際に役立つ「論理」の学習、日本語で考えた内容を英語に置き換える際に役立つ「英語発想」などの指導である。当該年度はこれらの指導を受けた学生の授業内ライティングテストの結果について, 事後にfluencyが伸びた学生の英文を対象に、エッセイの構成, 文法の正確さ、内容の深まりの3つの観点から分析し, 対象学生のアンケート調査の結果とともに考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目は、学生の英文の内容について深く掘り下げる分析を行った。具体的には、構成の変化、accuracyの向上、contentsの深化を調査し、学生アンケート調査結果と照らし合わせた。対象者は、年3回のライティングテストにおいて、 2回目テスト(7月)で100語を超えた学生のうち, 1回目テスト(4月)と2回目テスト(7月) で50語以上増えた学生とした。1回目から3回目まですべてのライティングテストを受けた対象者は延べ37名となった。 「構成の変化」については, 「順番を示すディスコースマーカーの有無」と「cohesionを示す文頭のディスコースマーカーの数」という評価項目により調査した。「accuracyの向上」については, 「be動詞の使い方のエラー3種類とこんにゃく文の数」, 「主節のないBecause節(Because Fragment)の数という評価項目により調査した。「contentsの深化」については, 「固有名詞, 数値的情報, トピックを際立たせる語句の数」という評価項目により調査した。分析の結果、1回目に比べて2回目で大きく改善している項目があるものの、3回目では変化なしあるいは成績を下げているものも少なくなかった。その原因として、モチベーションの影響が考えられる。学生がライティングテスト受験によるメリットを感じられない場合, 消極的な受験姿勢になっている可能性がある。テストのテーマの見直しや, ライティングの年間目標を設定させ, テストの語数, 文法, 内容についてのフィードバック提供など, 学生の意欲を高める工夫が必要であることが認識された。 「ライティング力向上の理由」のアンケートで最も多かった項目は, 「日本語を英語発想で英語に変える学習」と「小学生でもわかるような易しいシンプルな英文を書く学習」であった。
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