研究課題/領域番号 |
18K00826
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
伊達 正起 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 教授 (30259858)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 発話タスク / 繰り返し / 概念化 / 形式化 / 日本語使用 |
研究実績の概要 |
英語スピーキングにおいて、事前に日本語で発話することが概念化の役割を果たし、その後の英語でのパフォーマンスを向上させるのかを調査目的とした。大学生19名を参加者とし、参加者には物語タスク(6コマ漫画でストーリーを作成し発話)を使ったセッションを週に1度、合計5回与えた。その際、毎回異なる漫画を用いながら、各セッションで参加者はまず日本語でストーリーを話し、その後英語で同じ漫画についてストーリーを話すという練習を行った。そして、最後のトリートメントの後に紙媒体のアンケート用紙を使い、Q1「英語でスピーキングする時に、直前に日本語で話した内容をそのまま話そうとしましたか?」Q2「最初に日本語で話したことが、その後の英語でスピーキングするときに役立ちましたか?」などの質問を与え、参加者が日本語による発話に対してどのような意識を持っていたのかについて調査した。 その結果、以下の3点が明らかになった。 (1)Q1に対して、参加者の半数(10名)は「毎回話そうとした」と回答したが残りは「毎回話そうとしなかった」や「話そうとした回と話そうとしなかった回があった」と回答し、発話の繰り返しを実行するかどうかは参加者により異なる。 (2)Q1に対して「毎回話そうとした」と回答した参加者は、Q2に対して「発話のスピードが上がった」「英語でのストーリーが作り易くなった」「英語の文章や構文を意識できた」と回答しており、日本語による概念化がその後の英語での形式化をサポートすることで、パフォーマンスの向上につながっていると感じている。 (3)Q1に対して、「毎回話そうとした」と回答しなかった参加者の理由は、「日本語で言える表現を英語では言えない」や「英語で発話している際に、日本語では話さなかった表現が浮かぶ」などであり、日本語による概念化がその後の英語での形式化にリンクしていない場合がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英語による発話タスクの繰り返しにおいて、最初の発話が概念化の役割を果たすことでその後の発話の形式化をサポートし、その結果パフォーマンスが向上することは先行研究で調査済みである。今の時点で、日本語による発話も概念化の役割を果たし、その後の英語による発話の形式化をサポートする可能性が明らかになったことは評価できる。さらに、日本語による発話が有効に機能しないケースが判明したことは、発話の繰り返しの効果を更に高めるための手立ての必要性を示しており、今後の研究対象になるという点も評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
以下の点について調査を進めていく。 ・概念化のために使用する言語(日本語か英語)の違いによる影響について調べる ・日本語による概念化の役割を促すための指導や活動について調べる
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